《テオくんside》
みやとじんたんに、別れ際に言った台詞。
それは自分でも分かるほど気圧の下がった声だった。
冷えきった街をひとりで歩く。
ただの友達なのに。
いや、じんたんからしたら
もはや俺は友達ですらないかもしれないのに。
なんでこんなに辛いんだろう。
俺が寂しがり屋だから?
かまってちゃんだから?
自分にいろんな問いを投げかける。
でもそれは、どれも当てはまらなくて。
こんなふうな心のもやもやは初めてだった。
人間は" 初めて "というものが怖い生き物だ。
初めてのものには臆病になってしまう。
俺らしくない。
こんなに誰かに
感情を揺さぶられたのはいつぶりだろうか。
気になってしょうがない。
もっと知りたい。
" 藤枝 仁 "という1人の男を。
最近仕事を辞めて
縮こまっていた好奇心が溢れてくるのが分かった。
さっきまで俯いていた顔も
今ではもう既に前を向いている。
俺はとことん単純だ。
じんたんが振り向くのを待つのは面白くない。
俺が。
____俺がじんたんを振り向かせればいいんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。