第23話

分からない気持ち
1,009
2018/03/28 09:39
《☆イニ☆side》




テオくん
じんたんやっほ!元気?





病室のドアを開けるなり
なんの躊躇いもなくそう言ってくるテオくん。





大人数部屋で他にも患者さんいるのに。





でもその患者さんは
テオくんの明るさと愛想の良さを気に入っているのか
むしろ歓迎しているように見える。





テオくんは
見ず知らずの人さえも虜にしてしまうのだろうか。




テオくん
何があったか覚えてる?





テオくんがお見舞いに来てくれた時に
必ず言われる言葉。




☆イニ☆
もう大丈夫だよ、覚えてるよ





目を覚ましたばかりの俺は記憶を飛ばしすぎて
何度話しても忘れてしまっていたらしいから。




テオくん
そっか、よかった





荷物を置いて丸椅子に座ると
楽しそうに喋り出したテオくん。





そういえばテオくん、お喋りだったな。





たった1週間強一緒にいないだけで
こんなにも感覚を忘れてしまうなんて。





撮影は楽しいだとか、少し寂しいだとか。





テオくんの話は
やっぱりいつでも俺に元気をくれた。




テオくん
あ、俺の動画、見てくれてる?





思い出したように言う。




☆イニ☆
見てるよ、1つ残さず





見ないわけないじゃん、





せっかくテオくんが頑張ってくれるのに。





それに1番最初の動画なんて大号泣したんだからね。





夜中に1人、暗い病室で。





自分から聞いたくせに
やっぱ恥ずかしいなんて、テオくんらしい。




テオくん
ごめんな〜、帰って編集しなきゃ





本当に申し訳なさそう。





テオくんはなにも悪くないのに。





俺も早く治さないとな。





テオくんはいつでも笑顔にしてくれる。





久しぶりにテオくんに会ったから
いっぱい喋りすぎて喉が渇いてしまった。





テオくんが買ってくれていたペットボトルを取る。





もう少しでキャップを開けられる、というところで
ペットボトルを落としてしまった。





両手が震えている。





そして荒くなる息。





やばい、ヒートだ。





すぐに棚にしまってあった薬を飲む。





これから1週間またテオくんと会えないのか。





これはテオくんの事情ではなく、俺の事情。





テオくんと会えないだけで





なぜこんなに





____気持ちが沈んでしまうんだろう、

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