「泣けない」
私は8歳の頃まで、泣き虫でした。
その当時、私はお父さんもお母さんも弟もいてとても幸せでした。
ですが、4人で出かけている時に、事故にあいました。
事故…というより、事件でした。
ウイルスを私たちが来ていた都市にばら撒くためのテロでした。
そのテロで使うための車が私たちが乗っていた車にぶつかってきたのでした。
ウイルスはまだ未完成だったらしく、ばら撒かれることは無かったのですが、母と父の命を失いました。
私と5歳の弟だけが助かりました。
私はとても泣きました。8歳の頃の私にはとても耐え難い事でした。
ですが、弟は全く泣きませんでした。
"死"という概念が分からなかったのでしょうか、今弟に聞いても分からないと答えます。
私と弟は親戚の家に行きたくないと言い、2人だけで4人で暮らしていた家で住むことになりました。
お父さんとお母さんは突然私たちが死んでしまった時用にローンや学校への支払いは自動で行われるようになっていたようです。
そして、お金の心配はないよというように通帳には沢山お金が入っていました。
お金のおろし方は前にお母さんと行った時に覚えてました。
私は家に着いた時も母と父が居ないショックでまた泣きました。
弟が、おとうさんとおかあさんは?と聞いてきたので、余計に泣いてしまいました。
私は泣き疲れて眠たくなりました。
弟がおなかがすいたと言ったので、私は弟にカップラーメンを食べさせました。
弟がカップラーメンを食べ終わるのを見て、私は弟に、もう寝ようかと言いましたが、弟はまだねむたくないと言いました。
仕方が無いので、私は弟に絵本を読んであげました。
すると、弟は突然泣きだしました。
どうして泣くの?と聞くと、弟は、おねえちゃんは、はなれないでねと言いました。
なんと、弟は"死"という事がどんなものなのか分かっていたようでした。
でも、なんで泣かなかったの?と聞くと、分からないと答えました。
私は、弟の自然と出てきていた優しさにまた涙が零れました。
弟が泣き疲れたのか、ぐっすり寝てしまいました。
私は弟のぐっすり寝る顔を見て、隣で寝ました。
弟が、おねえちゃん、おねえちゃんと私を起こしました。
私は弟にどうしたの、と聞きました。
弟は、安心した顔をして、めがさめないのかとおもったと言いました。
私はその言葉を聞いて、父と母のことを思い出しましたが、涙は出てきませんでした。
きっと昨日泣きすぎて涙が出なくなったのかと思いました。
弟はそんな私の顔をじっと見ていました。
弟を幼稚園に送りに行かなきゃと、弟を着替えさせ、私も着替えました。
親用の名札を持って、私は弟を幼稚園に預けに行きました。
先生は事情を知っていたのか、これから頑張ろうねと言い、弟を預かってくれました。
私は急いで学校に行きました。
クラスの友達は、何も知らないのか、今日宿題計算ドリルだよーと言いました。
私はその言葉にとても癒されました。
普通を装ったり、慰めの言葉をかけてくれるより、普段の会話がとても癒しになったのです。
私はその後も普通に授業を受けました。
私は弟を迎えに行って、一緒に帰りました。
私は、8歳ながら頑張りました。
弟が遊びに行きたいといえば遊びに行きました。
私が小学4年生になった時、弟は小学一年生になりました。
ランドセルは高かったですが、弟が喜んでいたので、近所のおじさんに感謝しました。
小学4年生になって、私は生理が始まりました。
最初何が何だか分からないけど、頭がクラクラして目眩がしたので保健室で休んだりしてました。
次第にクラスに馴染めなくなっていました。
私が中学生になった時、私はいじめられました。
理由は、私が泣かなかったからと言っていました。
担任の先生が亡くなった時、みんな泣いていましたが、私は目が見えにくく、担任の先生がどんな人なのかちゃんと見た事もないし、担任の先生が私にだけあたりキツかったので、涙が出なかったかと思います。
私に暴力をしだした女の子たちは、今の担任の先生にバレたくないのか、教室ではいじめて来ませんでした。
今の担任の先生は、イケメンで、とても優しく、生徒達に好かれているような印象でした。いつも誰かと一緒にいました。
女の子たちは毎回、旧校舎の空き教室でいじめてきました。
私は、どれだけ殴られようがどれだけ貶されようが泣きませんでした、というより、涙が出ませんでした。
弟が、お姉ちゃん、その傷どうしたのと聞いてきましたが、なんでもないと答えました。
翌日、私をいじめてきている女の子たちが朝から旧校舎の空き教室に私を連れて行きました。
私は、別にどうでもよくなってました。
しかし、そこに居たのは私の弟でした。
弟が、お姉ちゃんと私に向かって叫んだ途端、と女の子が弟を殴り飛ばしました。
私はその途端、ものすごい怒りが湧き出ました。
ですが、私の力はとても弱かったので、無意味でした。
しかし、干からびた涙の代わりに、赤い涙が零れ落ちました。
女の子たちはそんな私の姿を気味悪がりました。
女の子の1人が私を蹴りました。しかし、痛みはありませんでした。
私は蹴ってきた女の子の足をつかみ立ち上がりました。
女の子はバランスを崩しました。
女の子たちはどこかへ行ってしまいました。
弟が私の前で久しぶりに泣きました。
きっと私が怖かったのでしょう。
私はもう泣けませんし、歩けません。
弟が羨ましいです。
今そんなことを言うと、弟に泣きながら謝られます。
その時に、弟は毎回、こういうのです。
お姉ちゃん、守れなくてごめんなさいと
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。