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車が走り出して約5分
現在、一言も会話ができていません
薮くんの方をチラッと見ると
まっすぐと前を向いて運転している
マスクとキャップ姿で
意識高いなぁ
絶対バレないようにしてるよね
無言のまま、また5分ぐらい時間は過ぎていった
これは、私から話しかけるべき?
でも、どーやって話しかければ、、
突然話しかけれたため
驚きのあまり変な声が出てしまった
たしかに、、言ってなかったな
下を向いて話す私には
薮くんが前を向いているのかこっちを向いているのか分からなかった
自然と名前を呼ばれてドキッとする
かわいいとか自然と呼び捨てで名前を呼んでくるとか
1つ1つの言葉に鼓動が高鳴っていく
意図的なのか、それとも自然となのか分からない
どっちにしろズルすぎるよ、、薮くん
こんなのファンじゃなくても好きになっちゃう
知っているけど、確認のため一応聞いてみる
薮 宏太、、本物だ
それから自然と薮くんの方を見て話すことが
できるようになっていた
他愛もない話をして
時間はあっという間に過ぎていった
その言葉を聞いて窓の外を見ると
外は飽きるほど見てきた景色
なんか、、すっごい寂しい、、
このまま時間が止まってしまえばいいのに、、
なんて言ってにこにこ笑っている
今、寂しいって言った?
そんなこと確認できないまま、家の前に来てしまった
着いちゃった、、
お礼を言ってシートベルトを外そうとするけど
上手く外れない
何かに引っかかっているらしく、全然取れない
そういうと薮くんは自分のシートベルトを外し
私の席に近づいてきた
その距離30センチ未満
引っかかって取れないシートベルトに手をかける
やばいやばいやばい/////
ほんとに心臓もたないよ、、////
早く離れてほしい気持ちとこのままでいてほしい気持ちが混ざって変な感じ
そう言うと身を乗り出してシートベルトを覗いてきた
ちょ、ちょっとまって/////
薮くんの肩が私の溝らへんに軽く触れている
心臓の音はさっきよりも大きくなり
鼓動も早くなっていった
このままじゃ、ドキドキしてること気づかれちゃう///
薮くんの匂いがさっきよりも強く香る
シートベルトを覗いていた顔がゆっくりと
起き上がってきて私の目の前で止まった
や、やっぱり、気づかれてたんだ///
顔が熱くなっていくのがわかる
そっと右の頬に触れられた
心臓は過去最強に音も大きく鼓動も早くなっていて
いつはち切れてもおかしくない
右頬に触れていた手はゆっくりとおでこに移った
薮くんの手はゆっくりと離れた
薮くんはパッと離れて自分の席に戻った
一気に静まり返り、自分の心臓の音だけが聞こえる
薮くんは手を出さず自分の席から見守っていた
言われた通り少し動いてみると
バチンッ
シートベルトが外れ凄いスピードで戻った
良かったって言ってほっとしたように笑う薮くん
ドアを開けて外に出ようと足を踏み入れた時
振り返ると
そこには人差し指を口元に当てて
マスクもキャップも外し薮くんそのままの姿があった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。