第3話

第一幕 シンデレラ 裏
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2020/10/26 12:26
娘の様子がおかしい。

それに気づくのに時間はかからなかった。

というのも

彼女は窓辺のイスに座って誰もいない空間に向かって話しかけるのだ。



そこに誰かがいるかのように。





楽しそうに。一日中。



これはイスに座っているときだけではない。何をするにも誰もいない空間に向かって話しかけるのだ。








そして彼女は滅多に外に出ない。

出るのは彼女の実の母の墓参りをするときだけだ。

…誰かと話しながら。

眠っている娘の母親はとても優しい人だったとあの人から聞いたことがある。



…そういえば、この家に来てすぐ、あの人から自分の部屋を与えられた時ドレッサーの中にこんな紙を見つけた。









”あの子はおかしくなった。

 つかえない。
 
 前まで仕事をさせていたのに、全く働かなくなった。

 そして、灰にまみれ、服はろくなものを着せていないのに

 不気味に笑みを浮かべながら誰かに向かって話しかけるようになった。

 そこには誰もいないのに。

 私や可愛い2人の娘があの子に仕事をしろと伝えると酷く怯えた目をするが、

 家事をやり始めてもすぐにほったらかしてどこかへ行くようになった。

 初めのうちこそ平気だったがだんだん怖くなってきた。

 金目当てで嫁いだが、こんな娘と居たくはない。

 使用人もみんな出ていき、娘の父親も滅多に帰ってこない。

 代わりに仕事をやるなんて御免だ。

 金のある家はここに限らない。

 私の美貌を利用して別の家に嫁ぐことにしよう。

 次に父親が帰ってきたら、文句を言ってこの家から出ていこう。

 準備を始めなければ。”








 
前の母親の記録だろうか。

少なくとも彼女の実の母親ではないだろう。

まったく、義理とはいえ娘を召使のようにするとはひどい母親とその娘たちだったのだろう。

おそらくあの子は相当ひどい扱いを受け、見えない何かを見るようになってしまったのだろう。
あの子の声が聞こえる。

「そうね。海。素敵ね…。今度行きましょう…。」

「ね、王子様・・・?」
王子様。

彼女の中には王子様がいるのだろうか。

…。この国の王子は、半年前に許嫁様と結婚されたはずだ。

その時は、国民全員が城に呼ばれ、盛大なパーティーが行われたなぁ。

とても美しいお城だった。



…彼女は行くことができたのだろうか?


おそらくだが禁じられていたのではないだろうか。



私がこの家に来た時のことは今でもはっきりと思い出せる。

美しい顔立ちなのに服はボロボロ、髪はかろうじてまとめられている程度。

とてもお金持ちの家のお嬢様には見えなかった。

不思議に思った私はつい、聞いてしまった。
「エラ、あなたはどうしてそんな服を着ているの?」

しかし、彼女はひどく怯えた目で私を見るだけで、何も教えてはくれなかった。



代わりにあの人が答える。


「みんなとられてしまったんだ」


当時は意味が分からなかったが今となってはよくわかる。
いつの間にか彼女は静かになっていた。

なにをしているのだろうとそっと彼女の方を見れば、一心不乱に何かを書き込んでいる。

日記を書いているのだとわかる。

彼女はいつも日記を書く。
私は一度、彼女の日記を見たことがある。



細かい日付などを覚えているわけではないが、お城での幸せな生活の様子ばかりが綴られていたのを覚えている。
幻覚や幻聴を聞いて彼女が幸せなら、私は良いと思う。

ただし、世間はそれを許してはくれない。

どこか普通でない人々に世間は冷たい。

彼女を夢から覚ますのは私にしかできないこと。




かつての私が救われたように。



今度は私が起こしてあげなければ。

もう起きる時間だよ。
「エラ」



私は彼女に声をかける。
やっぱり彼女は怯えた目で私を見る。






でも、






きっと







私が







彼女をー。





幕がおりる。
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どうも作者です。
ここまで読んでくださってありがとうございます
大変お待たせいたしました…💦


最近投稿できなくてごめんなさい!
ちょっと低浮上になるかもです…すまないぃぃ!

さて、ボキャブラリー語彙力のない私が書いた為文章が大変わかりづらいかもしれません…
ここわかんないとかあったらコメントしてください!頑張って答えます



では…引き続きお楽しみください




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