ブルっと武者震いをして
街灯の少ない湿った帰路を早歩きで進んでいく
時折すれ違う自動車、捨てられた自転車、
道端に散乱する空き缶や煙草の吸殻
全てが不気味だ。
冷たい息を殺しながら やっとの思いで
不気味な一本道を抜けると
白くて整った毛並みに
色の違う宝石のような瞳
その場にしゃがんで 猫の方へ手を伸ばす
人に慣れているのか 逃げる様子はひとつもなく
伸ばした手に顔を擦り付ける
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そう言って シロを抱っこすると ...
突然 毛を逆立てて
牙を剥き出しにしながら顔を歪ませる
私の “ 後ろ ” を見ながら
シロの様子から 私の後ろに
ナニカ が居るのは明確だった
怖すぎて ナニカの正体を見る気もしない。
シロは私の服の袖口を 噛んで
破れそうな程に引っ張る
頭は怖さでいっぱいなのに
考えるよりも先に行動していた。
シロを抱きかかえて
尋常じゃない速さでその場から逃げる
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何処かも分からない 細い路地裏に息を潜める。
怖さと疲労が混ざり合って
心臓が バクバク鳴って止まらない
その音に気付いたのか
私の左胸に ポスっと小さな手を当てながら
心配そうに私を見つめるシロ
シロは大丈夫だよ と言わんばかりに
私の頬をざらざらした舌で 舐めてくる
突然 目の前に黒い物体が現れ
私の腹部に強い衝撃を与える __
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!