酒を飲むか。飲ませるか。
‥‥‥どうしよう。分からない。
考えても、考えても、どうすればミッションをクリアできるか分からない。
このままだと私は‥‥死んでしまう。
────────罪人。
‥‥‥私は、何しにここへ来た?
そうだ、地獄に堕ちる為だ。罰を受ける為だ。
それなのに命が惜しい?
私は何を馬鹿なことをしているのだろう。
何故今まで忘れていたのだろう。
何故罪人が死ぬことを恐れたのだろう。
‥‥‥こんな感情はいらないんだ。
命に執着するな。
私は罪人だ。
──────私が生きて良い理由などどこにもない。
急に黙り込んだ私を不思議に思ったのか、シシビが私の様子をうかがった。
私は黙ってワイングラスを手に取る。
そして唾を飲み込んだ。
私はそのままワイングラスに入った赤ワインを一気飲みした。
‥‥‥全てではない。
不思議そうな顔をするシシビに、半分減った赤ワインを突き出す。
私は不適の笑みを浮かべる。
もしもどちらかが正解だったとしたら、私の助かってしまう確率は二分の一。
その二分の一の確率をゼロにする為には‥‥‥
シシビはそう言ってワイングラスを受け取った。
躊躇することなく毒入りの酒を飲むシシビに、私は少し驚いた。
シシビはワイングラスをわざと床に落とし、割った。
そして笑った。
『‥‥‥零』
───────途端に、目眩がした。
体に力が入らず、私はそのまま床に倒れる。
‥‥‥そうか、酒を飲むのが不正解だったということか。
もう既に体中に毒が回っていたんだ。
何か呆気ないなぁ‥‥‥
意識が朦朧とする中、シシビの醜い笑顔が見えた。
‥‥‥本当、お前は気持ち悪い。
──────そして私は、意識を手放した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。