腫れ物を見るような目から、人気者を見るような目に突然変貌したクラスメイト達に挨拶をされる。
これはどういうことなのか。
未だに理解できていないが、少し説明しよう。
これは昨日の出来事。
朝、下駄箱で靴から上履き履き替えている遠藤に、俺は問いかけた。
いや、それはお前が極度の方向音痴だと自分で言ってたから心配しただけで‥‥‥
遠藤はニヤニヤしながら俺の顔を覗く。
本当に怖い。
初めて会ったのに名前知ってるわ通っている学校知ってるわで色々と怖いんだよこいつ。
いやまじでお前の母ちゃん何者?
教室とは反対方向の方に人差し指を向けて、遠藤はそのまま教室と反対方向の廊下を歩き始めた。
すると遠藤は、あれ‥‥‥?と言って真剣な顔をしながらこちらへ戻ってくる。
俺は大きな溜息を吐き、遠藤を連れて教室へと向かった。
ガラッ、と教室の扉を開けると、教室にいたクラスメイト全員が一斉に俺の方を見た。
な、何だ?いつものことだけど今日は妙に‥‥‥
何かおかしいぞ‥‥‥今、俺に向かって挨拶が飛んだような‥‥‥
衝動的、と言ったら良いのだろうか。
俺はよく分からないままよく分からない挨拶を返す。
後ろの席の森は、しんと静まり返る今日で腹を抱えて笑った。
すると次々にクラスメイトが笑いだす。
どういうことだ、これ。
遠藤は俺の心を読んだかのように、話しだした。
遠藤はまるで自分のことかのように嬉しそうに笑う。
何の誤解だ、とかは思ったけれど今は聞かないことにした。
何となくだけど、遠藤は俺を皆の輪に入れたかったんじゃないかって思うんだ。
にしし、と笑う遠藤。
本当にこいつは、鈍感なのか鋭いのか分からない性格をしている。
次々と謝ってくるクラスメイトたちに、俺は囲まれる。
余計乗り出してくるクラスメイトから、俺は少し後退る。
後半の言葉を華麗にスルーしないでくださいます?
‥‥‥‥よし、諦めよう。
と、なんやかんやで今に至る。
いや、そのなんやかんやが超絶意味不明なんだけれども。
そして今思うこと。
何故俺に自分の名前を聞くんだこいつら。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。