翌日、目が覚めたら知らない所にいた。
─────という 偽造 のような展開は一切無く、いつものように自室のベッドの上で目が覚めた。
当選しなかった、というのは有り得ない。
「罪が重い程当選確率が高くなります。」
確かに、そう書いてあった。
私の罪は重いどころではない。
だから、当選しなかったという事は有り得ないのだ。
応募をしたらケータイの画面に《当選者は翌日発表致します》と出てきたのだ。
私が今いつも通りだということは、このサイトは悪質なインチキ野郎だ。
私は重い体を持ち上げて、朝の支度をした。
学校に行くと言えば家の中からあの時のように「行ってらっしゃい」と返事が来る、そんな淡い希望はすぐに消えた。
もう馴れたはずなのに、まだ無意味な希望を抱いてしまう自分がいることが一層、苛立たしくなる。
溜息を吐きながら家のドアを閉めて鍵をする。
ここはマンションの四階で、マンションから出るには階段かエレベーターを使うしか無い。
あとは‥‥‥飛び降りるくらいだ。
一度試そうとしたけれど、隣のおばさんに止められた。
「死んではいけないよ」
おばさんはそう言った。
けれど、私はそう思わない。
死んではいけない、なんてルールがどこに存在するのだろうか。
死んだって良いじゃないか。
それで、救われるのなら。
私はちょうど来た誰も乗っていないエレベーターに乗り込み、『1F』のボタンを押す。
すると、エレベーターは動き出した。
エレベーターはどんどん下へ降りて行く。
───────地獄へ行かないだろうか。
そんなくだらないことを考えていたら、ある異変に気が付いた。
エレベーターの隅にあるモニターが異常だった。
B120‥‥B121‥‥B122‥‥B123‥‥‥‥
有り得ない地下の階まで凄い勢いで降りている。
私は流石に怖くなって、非常呼び出しボタンを押した。
けれど、何も反応がない。何度押しても反応がない。
───────地獄へ堕ちてみませんか?
背筋が凍る。
そしてモニターは『B444444444』で止まり、エレベーターは大きな衝撃と共に止まった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。