第8話

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2020/10/16 09:36
参加者ゲーマー
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
だんだん悲鳴が頭から遠のく。


‥‥‥‥これは、何?


私の足元をまとわり付く黒い物体から呻き声が聞こえる。
そして、少しずつ泥沼のように足が沈む。動かない。

────────怖い。

声が出ない。誰か助けて。お願い。怖い。怖いよ。
誰か‥‥‥
中島 春
聞こ‥‥える‥‥‥
ふと、中島春の声が聞こえて、真っ白だった頭に水が降りかかった。
鳥羽 蛍
‥‥‥え?
中島春の体は泥沼のような黒い物体に、腰あたりまで沈んでいた。
芦阿 波戸
なっ‥‥何‥のだっ‥‥!?
芦阿先輩は泥沼のような物体から抜け出そうと、抵抗をしている。
時岡 奏
聞こえる‥‥‥?
時岡くんは泥沼のような物体に呑み込まれながらも、冷静に質問をした。
中島 春
うん‥‥‥‥
中島春はそれだけ答えると、黒い物体を見つめた。
中島 春
‥‥‥‥苦しい?
中島 春
怖かったね。けど、大丈夫
中島 春
大丈夫だよ。だから落ち着いて?
中島 春
蛍と奏くんと先輩は、私のお友達なんだ。だからやめてほしいなぁ‥‥‥
中島 春
やめてくれたら、遊んであげるから!
中島 春
ね?
‥‥‥‥‥中島春は何をしているの?

何故この黒い物体に話しかけてるの?
中島 春
えぇ!?やだぁ!?
中島 春
うーん、困ったなぁ‥‥‥
すると中島春は、うーん、それじゃあ、と悩みながらも黒い物体に言った。
中島 春
お友達になろう!
‥‥‥‥は?
中島 春
本当だってー!
中島 春
ね?だから‥‥‥‥
すると突然、中島春から周りへ広がるように黒い物体は消えていき、薄暗い空は青い空へと変化した。
それと同時に、黒い物体から何かが出てくる。
鳥羽 蛍
あ‥‥‥‥
私の足元には、沢山の動物が私に縋り付くように鳴いていた。
芦阿 波戸
聞こえるってまさか‥‥‥
時岡 奏
こいつらの鳴き声か‥‥‥
時岡くんはすっとしゃがみ込み、近くにいた猫を優しい顔でそっと撫でた。

すると猫は、にやぁ、と笑うように鳴いた。
芦阿 波戸
おわっ!?
芦阿先輩の声が聞こえたと思えば、わんっ!という犬の鳴き声が聞こえた。

私は芦阿先輩の方を振り返る。
芦阿 波戸
いや、ちょ、や、やめろって!
犬が芦阿先輩にじゃれている。

犬は芦阿先輩を押し倒し、芦阿先輩の上に乗って芦阿先輩の顔をぺろぺろ舐めている。

‥‥‥‥なにこれ。可愛い。
中島 春
はわわ‥‥‥!
中島春は、とても嬉しそうにワニを撫でてい‥‥‥‥‥‥ワニ!?
鳥羽 蛍
え!?
中島 春
あ、この子ね、さっきお話しして友達になったの!可愛いくない!?
さっきお話しして友達って、あの時の‥‥‥

でも、この沢山の動物は一体‥‥‥
中島 春
この子とか他の子達はね、ペットだったけど捨てられちゃったり、殺されちゃったりしたんだって
鳥羽 蛍
だから、その怨念‥‥‥みたいな?
中島 春
まあ、そんな感じになるね
中島春は苦笑した。

気付かなかった。聞こえなかった。この動物たちの鳴き声‥‥‥いや、泣き声が。
中島 春
それに、似てたから‥‥‥声が聞こえたのかもしれないね
似てたから‥‥‥?それはどういう‥‥‥
シシビ
いやー、予想外の展開ですねー!
突然、シシビの声が頭に響‥‥‥いていない?それに、モニターも無い‥‥‥‥
シシビ
ナカジマハル、余計なことをしてくれましたが‥‥‥まぁ、色々と楽しかったので良しとしましょう!
私の背後・・から、楽しそうな声が聞こえる。

私はまさかと思い、勢い良く振り返った。
シシビ
ん?どうしました?トバホタル
黄金の瞳に、少し青みがかった髪の青年‥‥‥‥間違いない。シシビだ。
シシビ
あー、もしかしてびっくりしてます?
シシビ
まぁそうですよねー、実物ですもんねー!どうですか?格好いいですか!?
いや、格好いいけど、美形なのは確かだけど、‥‥‥‥この「地獄ゲーム」を始めた奴だと考えるとそうは思えない。
シシビ
いやー、その顔傷付きます!
芦阿 波戸
全然傷付いてるよーには思えねぇけど
中島 春
突っ込むんですね‥‥‥
何この会話‥‥‥と呆れ気味だった私に、一つの声が降りかかる。
時岡 奏
参加者ゲーマーの半分、どこへ消えた?
時岡くんの声に、私は疑問を抱いた。
鳥羽 蛍
半分‥‥‥?
シシビ
ゲームオーバー
‥‥‥え?
シシビ
半分の参加者ゲーマーさんは完全に怨念に呑み込まれたので失格、つまりゲームオーバーになりました!
シシビは笑って言った。
時岡 奏
‥‥‥ゲームオーバーしたら、どうなる
時岡くんは、ほぼ答えを確信しているかのようにシシビへ問う。
シシビ
察しが良いことで、トキオカカナデ
シシビはまだ、にこにこと笑っている。
時岡 奏
どうなるかと聞いているんだ
するとシシビは、せっかちですねー、と言い、満面の笑みで答えた。






───────『死にます』と。

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