第46話

肆拾陸
304
2021/06/18 12:29
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皆さんこんにちは。すみません、突然ですが作者の月渡です。
前回の第45話、つまり「肆拾伍」のことで少しお知らせを。

3月下旬のことなのですが、前チャプターを公開したはいいもののバグの影響で大半のストーリー(本文)が抜け落ちた状態でした。
それに気付き運営さんにかけあってみたものの、復元は叶わず書き直し、という結果に。

それで、チャプターを1度公開してしまうと2度目の公開で通知がいかない場合が多いのでは、と思うので、「蛍が姉の蒼に問い詰めるシーン」に覚えのない方は1つ前のチャプターに戻っていただいて、そこから読んでもらえると幸いです。
お手数をお掛けしてすみません。

そして、今後とも「地獄ゲーム」をよろしくお願いします。
更新スピードは頑張って上げたいと思っています。

─────では、本編へどうぞ。

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鳥羽 蛍
────それで····
参加者ゲーマー
ハッ、有り余る金をどう使うかなんて俺の勝手だろ?
参加者ゲーマー
そういうことを言ってるんじゃない!なぜ自分が犯した罪を金で消そうとしたのかって聞いてるんだ!!
参加者ゲーマー
都合の悪いことはなかったことにすればいい。それだけだ
参加者ゲーマー
っ···!!お前、
突然大きな音がしたと思ったら、どうやら隣のグループが騒ぎになっていたらしい。
お金がどうだ、とか。

私は自分の話をやめて、仲介しに行こうとする波戸先輩の腕を掴んで止めた。
芦阿 波戸
···ぇ、あ···蛍、ちゃん?
鳥羽 蛍
いいですよ、あれは多分止まらない
芦阿 波戸
あー···そっ、か
波戸先輩は何かを考えるように頭を掻いた後、わかった、と静かに言って席に戻った。
中島 春
あのお金の人も大概だけど····話さえぎって怒鳴るのもなかなか迷惑だね····
時岡 奏
そこまでの胸糞話だった、って感じかな
鳥羽 蛍
さぁね
そして、沈黙が流れる。

いつの間にか他のグループも沈黙しており、私たちの隣のグループの騒ぎだけが空間内に響いていた。
参加者ゲーマー
お前みたいなやつがいるから!俺らは苦しんでるんだ!!はっ、金しか目にないなんてとんだクズだな!!!
参加者ゲーマー
····何?先程から聞いていれば怒鳴りに怒鳴りに怒鳴る。この私を侮辱するのか!この下民が!!!
騒ぎがヒートアップし、
「ひぇ···」
「下民て···あの人どっか昔の貴族様だったりする??」
「なんか面倒臭くなってきたな···」
との声が聞こえた。
因みに、上から春、波戸先輩、奏である。
参加者ゲーマー
お前大人数から恨まれてたんだろ!だからこんな地獄ゲームにいるんだ!!!
参加者ゲーマー
ハッ、それはお前も同じだろう!大方、我々のような者に嫉妬でもして盗みでも働いたのだろうな!!
参加者ゲーマー
馬鹿にしやがって!俺をお前みたいなクズと一緒にするな!!俺は何もしていない!なんの罪も犯していないのに巻き込まれた被害者だ!!!
参加者ゲーマー
馬鹿にしているのはお前の方だろう!私こそなにも罪を犯していない!裁判にかけられて刑務所に行っていないのだからな!!
瞬間。

騒ぎを切り取るかのように、騒ぐ二人の間を一本の日本刀が通った。
はらり、とどちらのか分からない切れた髪が落ちる。
シシビ
やだなー。そんな騒がないでくださいよ
二人の間に割って入る一人の少年───シシビは、先程の空気を切り裂いた日本刀を片手に握っていた。
シシビ
進行妨害ですね。厳罰に処します
参加者ゲーマー
はぁ!?そんなこと聞いてな────
ヒュ、と息の詰まる音。
シシビの日本刀が、騒いだ片方の奴の首に触れていた。

プツリ、と刃が肌を切って細胞に押し入る。
シシビ
あは。何を言うかと思えば
からり、と嘲るように嗤うシシビ。それは確かに、絶対零度の目をしていた。
シシビ
貴方たちはそもそも、何かしらの罪があってここにいる。それも、他人ひとより重い重い罪をね
誰かが、小さな悲鳴をあげる。
シシビ
僕たちはそれを断罪するためにここにいる
誰かが、一歩後ろに後ずさる。
シシビ
死刑囚は、執行人に逆らうことを許されない
誰かが、その場にへたり込む。
シシビ
自覚しろ。お前らは、お前らの罪は、我々に逆らえるほど軽くはない
誰かが、息を飲み込んだ。
シシビ
今、この時、お前らの心臓いのちは、我々の掌の上にある。それを忘れるな
そして、静寂が訪れた。


さっきまで騒いでいたはずの二人は、もう人ではなかった・・・・・・・
いや───人であった何か、というべきか。
サシビ
アー!シシビがぬけがけしタ!
ウシビ
ぬけがけって····お前は補佐だろ
サシビ
えーでモ···
ウシビ
でもじゃない。この場を任されているのはシシビ。大人しくしてろ
サシビ
はァイ。まぁ···それにしても随分とやったネ?シシビ
シシビ
····そうだね。少しやりすぎてしまったみたいです
そう言ってシシビが見下ろしたのは、血溜まりと肉片。人だった、もの。

すべて、シシビが日本刀で切り刻んだものだった。
シシビ
二名が進行妨害により退場。────さて!皆さんはお気になさらずゲームを続行してくださいね
くれぐれも、粗相のないように。

そう言って、シシビは暗闇へと消えてく。
いつの間にか無惨な人の成れ果てはなくなっていて、サシビとウシビがシシビの後に続いていなくなった。
芦阿 波戸
·······なん、だよ。あれ
時岡 奏
もともとああいう奴らだったよ。あの二人が度を過ぎたのもあるけど
鳥羽 蛍
····春?大丈夫?
中島 春
····ぇ、あ、うん
顔色の悪い春の背中をさすり、私はシシビが消えていった暗闇を見つめる。


慣れたような手つきで人を切り刻んで殺したシシビは、我々・・と言った。
それはサシビとウシビだけが含まれているわけではないと、そう思う。

なら、今、シシビがこの場でこのデスゲームを進行している裏で───まだ何かが動いている。
この進行役たちは何かしらの組織に所属していて、今回はその組織の活動にあの三人が当てられたというわけだ。


·····なに、それ。そんな大きな力が働いていて、なぜ私たちは何も知らなかったの?
警察も、政府も、総動員するほどのこの大虐殺を、なぜ報道陣は報道しないの?

おかしい。何が起きている?


今、日本に、何が──────
時岡 奏
すっと、割って入った透き通る声。
時岡 奏
話の続き、できる?
周りを見てみれば、どうやら私の様子を心配したらしい三人が私を見つめていた。

あぁ····いいや。今は、考えることをやめよう。
鳥羽 蛍
大丈夫。続き、話すね
私はそう言って、また口を開いた。


そして、始まる罪の話。

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