「あのお客様、、」
と言いながら同僚が指さしたのは少し身長が高めなスラっとした男性
今日はバレンタインデーだから、男性1人の客は珍しく、ずっと立ち止まっている彼はこの空間ではより目立つ存在だった
『もう30分ぐらいずっと迷ってるよね』
「声掛けた方がいいかな、、」
『迷うなあ、バレンタインのチョコの売り場で声かけられたら恥ずかしいかもだよね』
「うーん、だよね。でも、アドバイスぐらいできるかな、、』
と、同僚が声をかけに行こうとした瞬間レジに女子高生が会計をしに来てしまった。手が空いてる私が行かなきゃと思ったら、もう体と口が勝手に動いていた。
『私行ってくるね』
「え、ありがとう」
『すぐ戻るね』
『そちらはブランデー入りのものになります』
北斗「あ、、」
『お酒好きの方にオススメですよ。どなたかへの贈り物ですか?』
北斗「……彼女に」
マスクとサングラスで顔はよく分からないけど、スタイルも良くて雰囲気はとてもイケメンだった。
『お酒は好きな方ですか?』
北斗「彼女、酒は1回しか飲んだことないんですよ笑、だからこれは彼女に贈るには違いますね」
『こちらの花の形のはどうでしょう、、可愛らしくていいと女性は喜ぶと思いますよ』
北斗「それ、いいなって思ってたんですよね。あいつ、花好きなんで、、あと動物も好きなんでうさぎのやつでも喜びそうで、あと、このゴリラも笑ってくれそうで」
『素敵な方ですね』
北斗「何あげても喜んでくれそうで迷っちゃいますね」
『逆チョコ、ですか』
北斗「普通バレンタインって女の子からですよね、気の迷いでデパート入っちゃって」
『でも、逆チョコ貰ったら女性はみんな嬉しいですよ』
北斗「じゃあ、このブランデー入りの1つと動物の1つずつ買います」
『え、お酒大丈夫じゃないんですよね?』
北斗「仕事仲間にでもあげます」
『ありがとうございます』
北斗「……色々とアドバイスありがとうございました」
『いえ、特に役立つアドバイスできなくてすみません』
北斗「そんな事なかったです、じゃあ、失礼します」
「北斗〜、ハッピーバレンタイン!」
北斗「声でけえよ」
「えへへっ、おかえりなさい」
北斗「ただいま」
「はいバレンタインどうぞ」
北斗「……実は俺もあるんだよね」
「え、チョコ?!」
北斗「でかいって、声」
「わー、すごいすごい!高そう!!」
北斗「食いつくとこそこかよ」
「……逆バレンタイン?」
北斗「そういうことになるね」
「わー初めて、嬉しい」
北斗「いや俺めっちゃ迷っちゃってさ」
「だから遅かったんだ」
北斗「いや、あなたお菓子手作りするって言ってたじゃん?」
「うん」
北斗「失敗してそうだから、遅くしてあげようかなって」
「……舐められてる?」
北斗「ごめんごめん笑」
北斗「っていうことがあってさ」
樹「うん、いい話だとは思うよ、思うけど」
北斗「けど?」
樹「オチは?」
北斗「………………ないね」
樹「だよね、お前惚気にきただけだろ」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!