あの時の
まだ背が少し低かった
中学生が、
背を伸ばして
私の前に現れている。
「 あの時、三島さんの下の名前、聞きそびれたから。 」
『 知って、どうするの? 』
「 どうもしないです。
俺が、知りたいだけなんで。 」
『 ...あなた。 』
「 改めて、ありがとうございました 」
『 うん。今は大丈夫? 』
「 強くなったと思いますよ。あの時よりは。 」
あなたさん守れるくらい
強くなりたくて、
頑張りました。
そういう井上くんは、
あれからずいぶんと
成長したようだった。
それになんか、
前よりカッコよくなった
気がする。
「 あなたさん、××××学園ですよね。
俺、そこ受けますから。 」
『 私が3年生だったら? 』
「 そうだとしても、あなたさんが行った高校に行きたいんです。 」
『 そっか。 』
「 絶対行きますから。 」
『 ふふ、待ってる。バイバイ 』
「 さようなら 」
井上くんは、
軽くお辞儀をした。
◇.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!