そう言うと、先生は優しく微笑んで、
涙でびしょ濡れになったサングラスを両手で丁寧に外してくれる。
本来ならここで、「たまご」とか「はんぺん」とか言っていた。そしてその時は、気持ちが伝わらないことにもどかしさを感じていた。
だが、実際____何でも喋れるようになったらなったで、どう返して良いかわからない。
今思えば、おでんの具と縛りがあった方が案外楽だったのかもしれない。
私の記憶はそこまでいったところで、ぶつりと切れた。
いや、正確にいうと、切らされたのだ。
声のした方を見ると、ドア付近にツンデレ君が立っていた。
しまった、昔ことを思い出してたから…
とか考える暇もなく、頭からサァッと血が引ける感覚に襲われた。
私は素早く財布取り、部屋を出ようとした。
パシッ
だが案の定…腕を掴まれた。
と、言うことで、ツンデレ君とコンビニに行くことになってしまった。
【伏黒side】
「あいつはさ、誰よりも我慢強いから」
俺は教室を出てからしばらく、その言葉が頭の中で反響していた。
加えて、この前の任務の時のあなたさんの言葉
「私のことはあまり信用しない方が良い。」
その2つの言葉が、2人の声が、やがて重なり、響いて、五月蠅かった。
とにかく、本人に話を聞かなければ。
あれだけ先生に言われといて、気になるだけじゃ終われない。
自分の部屋に向かっていた足が、くるっと方向転換した。
あなたさんの部屋の前まで来る。
俺はあなたさんの部屋のドアが開いていることに不信感を抱きつつもそのまま部屋の中を覗いた。
居た。確かにそこに、あなたさんは居た。
けれどどこか…悲しい、淋しい顔をして、枯葉の舞い落ちる窓の外を見つめていた。
それはまさに、俺の知らないあなたさんだった。
"たまご"…?
たまご、とはどういう意味なのだろう…
ただでさえあなたさんの昔のことを知りたいのに、そんなことを呟かれると異様に気になってしまう。
俺はその単語の意味を知ると言う意味も兼ねて、あなたさんと一緒にコンビニに行くことになった。
〜作者から〜
☆50ありがとうございます!!!!!!
めっちゃありがとうございます!!!
泣きます!!!!!!
はい泣きます!!!うぇーん!!うぇーーん!!!
…あ、待って、お気に入り外さないでやめて………
これからもこの作品をよろしくお願いします!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!