第13話

"ありがとう"
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2021/03/19 20:00



狗巻 あなた
……?
私はゆっくりと瞼を開ける。

そして朦朧とする意識を治すように、2、3回ぱちぱちと瞬きをする。
狗巻 あなた
………ちくわ!!!!
ガバッと起き上がる。
あたりを見渡す。どうやら寝ていたようだ。
五条 悟
あ、起きた?
狗巻 あなた
…!!!はんぺ、ん
やっとか、というような顔をしてこちらを振り向く五条先生。
五条 悟
僕つきっきりだったんだよ〜?家入が治してから。
狗巻 あなた
……!!!
よく見ると、五条先生のかけているサングラスの下からクマが見えた。


そしてここは高専の医務室。ベッドで寝かされていたようだった。
五条 悟
あのさ、あなた。
狗巻 あなた
たまご?
五条 悟
一回、普通に喋ってみて。おはよう、とか。
狗巻 あなた
……?!
五条 悟
いいから。
疑いがかった目を向けながら、口を開く。
狗巻 あなた
……お、おはよ、う…………?!?!?!
重い口から、すっと言葉が出てくる。
普通の言葉を喋れたことに、私は驚きを隠せなかった。
五条 悟
………次、動くな、って言って
え………





それは、五条先生を呪うということに等しかった。

いくらふわふわしていてうざいからと言って、呪うのは胸が痛かったが、私は五条先生を信じて口を開いた。
狗巻 あなた
………動くな
五条 悟
…うん。動けるね。
へ?
五条 悟
あなた……やっぱり、そうだ。
と、五条先生は私の隣のベッドに腰掛ける。
五条 悟
驚かないで聞いて、あなたは………
































五条 悟
もう呪言は使えない。
狗巻 あなた
?!
五条 悟
体を治すにはそれしか無かった。身体を治した代償だよ。
驚いてあたりを見渡し、たまたま目に映った鏡を見る。

なんとも驚くことに、口から伸びていた呪印が消えていた。
急いで舌を出す、が____そこもまた、呪印が無かった。
五条 悟
その代わり、もう普通に会話できるよ。ほら、なんか言ってみて
普通に会話できる、とは?と思ったけれど、
落ち着いて、ゆっくり深呼吸して、口を開いた。
狗巻 あなた
……ごじょう、せんせい。
私の言葉は、まるで初めて聞いた英語をそっくりそのまま話そうとしている子供の様にカタコトで。

飽きるほど聞いてきた言葉なのに同じように発音が出来ないことに少しもどかしさを感じた。

それでもどうにか、口を開く。
狗巻 あなた
………たすけてくれて、ありがとうございました。
五条 悟
え、
無意識に、目に涙が溜まり、やがて頬をつたう。
狗巻 あなた
あ…ごめ、なさ……
はじめて、ありがとう、いえた…から……グスッ
五条 悟
あなた……
すると先生は立ち上がり、私のベッドの隣でしゃがみ込んだ。








そして……
















付けていたサングラスを、泣いている私に優しく掛けてくれた。









五条 悟
…好きなだけ泣いたら良いよ、あなた。
狗巻 あなた
う、ぅッ……グスッ、
サングラスに水滴がポタポタと落ちていく。
次第に視界は歪んでいった。

















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