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第5話

第5話


「あれ、佐倉さん?」


突然聞こえた声に体が異常な程までに飛び上がった。


「し、篠原くん…なんでここに」

篠原くんは今は部活中のはずだ。


だからこの時間にしたのに。


「それが一昨日くらいから風邪引いてて、それを顧問に言ったら今週末は大事に大会があるから今日は帰って休んでおけって」


なんということだ。

さ、最悪だ……。


「それで佐倉さんは?」

自分の下駄箱の前でジッと立っている女子なんて気味が悪いに決まってる!!


「あ、いや…あの違くてこれは、ですね」


弁解しようと考えれば考えるほど頭の中が真っ白になって何も考えられなくなってくる。


それでもその真っ白な中に1つ、私がさっき言った言葉が流れた。




『後悔だけはしたくない!!!』




心の中でしっかりと頷いた後で私は落としていた視線を篠原くんに向けた。



「あの、これ……」


腕に抱えていた赤い箱を篠原くんのまでに差し出す。


「え、これって…」

突然の私の行動に篠原くんも驚いている様子だった。

そりゃそうだろう。

全く眼中にない女子からいきなりチョコ渡されたらそうなるよね……。



「あの!私、篠原くんに一目惚れしたんです!」


「……ぇ、え」


「去年、篠原くんの打ったボールが当たった時からずっと好きでした!だから今年同じクラスになれて嬉しかったし、また話せて幸せでした……付き合って欲しいなんてそんなことは言わないので私の気持ちだけ知っ」



「付き合って欲しいって言わないの?」





「…………へ?」


篠原くんからの突然の発言に思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

この後は、私の気持ちだけ伝えたかったので…って言ってダッシュで帰る予定だったのに篠原くんのせいで全て狂ってしまった。





「付き合って欲しいって言ってくれないの?」



「あ、いや……だってそんな欲深いこと言えないですよ…図々しすぎて」



「欲深くなっていいよ」







「…………へ?」

本日2度目の素っ頓狂な声。




ポカンとする私を前に篠原くんは、

「だから……」

と赤い箱に1度視線を落としてから真っ直ぐに私を見つめて






「俺は佐倉さんと付き合いたいって言ってるんだけど」






とんだ爆弾を私の上に落とした。


篠原くんのいきなり発言に私の思考は停止、再起動不可能状態だ。


そんな私を置いていくかのように篠原くんは更に言葉を続ける。




「俺も去年のあの日……がんばってくださいねって言った時の佐倉さんの笑顔がずっと頭から離れなくて…でも話す機会ももうないかなって思ってたら今年同じクラスになれて正直嬉しかった……俺もさ、佐倉さんの笑顔に一目惚れ…してたって言うか」



言葉を紡ぐ度に紅く染まる篠原くん頬。


それを見て嘘じゃないんだって思えた。



「俺は佐倉さんと付き合いたいって思ってた。佐倉さんは…?俺とは違う気持ち…?」


不安そうに瞳を揺らす篠原くん。



違う気持ちなんて…あるわけないじゃないですか…。


あの日からずっと好きだったのに。






「同じ気持ちに決まってるじゃないですか!!!」


よく分からないけどなぜか涙がこぼれてきてその涙は止まらなくて──、




それでも目の前で口を手で覆いながらとびきりの笑顔を見せる篠原くんを見ていたら私にも自然と笑顔がうつって…、









「「ずっと大好きでした」」





私の一目惚れから始まった恋は無事結ばれることが出来ました。


ありがとうございました。


~fin~





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その後、自然の流れで私たちは一緒に帰ることになって、、




「俺さ、大事な試合の前に風邪引いてなんかついてないなって思ってたけど、佐倉さんがあんなふうに目の前で好きって言ってくれたら風邪も悪くないかなって思った」



「や、やめてくださいよ!!!」


2人の恋はまだまだ続く……。