桐山side
〜現在編〜
あれから朝食も食べ終わって3人でゆっくり
テーブル席で話したりゴロゴロしていると
いきなりカフェの扉がガタガタと音をたてた。
肩をビクッと震えさせたあなたを
淳太くんが抱き寄せて守りに入った。
もしかしたら…そういう可能性もあるから。
恐る恐る座っていたソファーから立って
カフェの扉の方へと近付く。
扉の前まで来て近くにあった雑誌を手に取り
右手で扉を開けた。
扉を開けるとそこには前淳太くんが見た人と
背格好が似ている人とその人の後ろには
別の記者が立っていた。
記者①「あの、こう言うのもなのですが…。
ここで元紅一点の村井あなたが働いてますよね?」
記者②「…ジャニーズWESTの桐山さんじゃ
ないですか!」
記者②「まだ繋がってたんですね!?お話聞いても
よろしいですか?」
グイグイと中に入ろうとする記者たちを外に追い出し
俺も一緒に外に出て外で話すことにした。
記者①「なら本当のこと話してください。」
言いたいことを言ってカフェに戻ろうとした時
俺の腕を記者の1人が引っ張った。
記者①「…今日のことはこれで失礼します。
次は桐山さん達がいない間に来させて頂きます。」
記者②「なら一生濵田さんとの再会はありませんね?」
気持ち悪い笑みを浮かべた記者の1人は
俺の方に歩み寄ってそう大きい声で言った。
中にいる淳太くんとあなたに聞かれてないか…。
あなたは大丈夫やろうか…。
記者の1人の腕を取ってカフェに戻った。
まだ流石に帰ってないだろうから
厳重に扉を閉めた。
鍵もかけてなんなら扉の前に待ち合い専用の椅子を
2個置いて中に入られないようにした。
テーブル席を見ると淳太くんの腕の中で
震えているあなたを見つけた。
あぁ…
これは絶対にあなたに聞かれてたんやなって
すぐに分かった。
淳太くんが優しくあなたを宥めている所に
俺も慌てて駆け寄った。
淳太くんの後ろに行くとそのまま淳太くんから
あなたを受け取った。
優しく抱きしめると弱い力で俺の首元に腕を
回して抱きついてきたあなた。
あなたを姫抱きにして2階に連れて行った。
ベッドに優しくあなたを下ろして
まだハァハァ言っているあなたの頭を
優しく撫で続けた。
ちょっとずつだけどあなたの呼吸も安定してきた。
この一週間がホンマに辛い。
濵ちゃん個人の仕事と俺らグループの仕事の都合で
濵ちゃんは俺らより1週間遅れであなたに会う。
こういう時にはやっぱり俺やなくて
Jrの時から濵ちゃんやった。
何か不安になった時、怖くなった時も
俺のことも頼ってくれたけど
それでもやっぱり濵ちゃんに頼ることが多かった。
濵ちゃんに優しく抱きしめて貰えば
あなたも落ち着いて自信を取り戻す。
俺が抱きしめるのも
淳太くんが抱きしめるのも
それはやっぱりあなたにとっては違かった。
どれもこれも何もかも
俺たちは濵ちゃんに勝つことなんか1度もなかった。
これからも1度もないんや。
あなたの中では1番は濵ちゃんやから。
頭を撫で続けていたから気持ちよかったのか
あなたはそのまま眠っていた。
まだちょっと頬が濡れているあなたの顔を
タンスからタオルをとってトイレの手洗い場で
濡らして顔を拭いてあげた。
短いようで長くて長いようで短くて…。
あなたと濵ちゃんにとっては短くて
俺と淳太くん達にとっては長いんや。
きっとそういうこと。
誰もなんとも言えないこの微妙な時間だけでも
今は俺たちにあなたのこと守らせてな?
微妙な時間から抜け出せれば
あなたにとっての最高の人と
濵ちゃんにとっての最高な人と
最高な時間を過ごして欲しい。
俺らはそれを繋ぐための道具でも構わへん。
2人が笑って幸せな時間を過ごせるなら
それならそれでホンマに嬉しいから…。
1週間だけ…。
傍に居させて。
道具でええよ。道具で構わへんよ。
俺は濵ちゃんに会えるまでの道具でいい。
自由に使ってええよ。
話し相手とか癒し相手とか
そんな可愛いものでも相手になる。
ほんまは一生とか言いたいけど
そんなこと言ったら濵ちゃんに怒られるから。
ホンマやで?あなた。
俺たちはちゃんと
あなたと崇裕のバトンを繋げるよ。
「好き」から「愛してる」のバトンをな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!