貴方side
〜現在編〜
横山くんの隣にはあっくんと淳太がいた。
私はどうすればいいのかキョロキョロしていると
横山くんの前にリップクリームを差し出すと
横山くんは笑って受け取って
とリップクリームをポケットにしまって
そのまま手を私の頭に優しく撫でてくれた後
あっくんと淳太の肩をパンっと叩いた。
そのまま横山くんはロケバスの方に戻って行った。
そう言ってあっくんは私に近づき優しく私を
抱きしめた。
あっくんは肩が震えていて泣いているんだと
気がついた。
淳太も近付いてあっくんと一緒に私を
抱きしめてくれた。
私も2人の腕の中で涙が止まらなかった。
…まるであの時みたいに。
私がお客様を満足させるダンスや歌が出来なくて
悔しくて悔しくてその日の公演が終わった途端
私は1人で楽屋に戻った後
突然私がいた楽屋の扉が開いて誰かが私を
優しく抱きしめてくれた。…バックハグで。
その時私を抱きしめてくれた人が
「もうええよ。あなたはもう十分やったで。」
と。
私はその途端に泣き崩れた。
私を抱きしめた人は私の前来てくれて
そしてまた強く抱き締めてくれた。
その人が、この2人だった。
2人は私を優しくゆっくり離し私の頭に手を置いた。
そんな時、後ろからスタッフさんに呼ばれ
あっくん達は行かなければならなかった。
そう言えば1度だけあっくんにオムライスを
作ってあげたことがあった。
…私の手料理が食べたいとあっくんが
レッスン終わりに私を呼び止めた。
その頃から私は料理作りにハマっていて
1度だけ崇裕に作ってあげたことがある。
それを見ていたあっくんが嫉妬して
私も崇裕と同じオムライスを次の日作って
持ってきて、一緒に食べた。
その時も美味い!って言いながら
あっくんはスプーンを止めずずっと
パクパク食べて完食した。
2人は最高の笑顔を残したままロケバスに向かった。
横山くんの方を見ると私に大きく頷いてくれた。
もしかしたら横山くん……。
私の疑問は静かに消えて
3人が乗っているロケバスを静かに見送った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。