第21話

イヤモニが白色の理由㉑
3,000
2020/09/26 12:17
貴方side
〜現在編〜
あなた

……っ。

桐山照史
桐山照史
……あなた。
中間淳太
中間淳太
……あなた!
横山くんの隣にはあっくんと淳太がいた。
私はどうすればいいのかキョロキョロしていると
横山裕
横山裕
…どうした?
なんかあったか?
あなた

……えっ、あっ。これ…。

横山くんの前にリップクリームを差し出すと
横山くんは笑って受け取って
横山裕
横山裕
おおきに。これ探しててん。
………先に戻っとくな。
とリップクリームをポケットにしまって
そのまま手を私の頭に優しく撫でてくれた後
あっくんと淳太の肩をパンっと叩いた。
そのまま横山くんはロケバスの方に戻って行った。
桐山照史
桐山照史
……あなた。
アホっ!!
ほんまに、アホ!!
もう……良かった……。
そう言ってあっくんは私に近づき優しく私を
抱きしめた。
あっくんは肩が震えていて泣いているんだと
気がついた。
あなた

……ごめん。
……ごめんなさい。
2人と崇裕は責めないでって
言ってくれたけど
…やっぱり無理だよ。
私は勝手に逃げて傷つけて
何も言わないで……。
淳太の気持ちも弄んだ。
私は…本当に最低だよ……。

中間淳太
中間淳太
……ちゃう。ちゃうから。
淳太も近付いてあっくんと一緒に私を
抱きしめてくれた。

私も2人の腕の中で涙が止まらなかった。
…まるであの時みたいに。

私がお客様を満足させるダンスや歌が出来なくて
悔しくて悔しくてその日の公演が終わった途端
私は1人で楽屋に戻った後
突然私がいた楽屋の扉が開いて誰かが私を
優しく抱きしめてくれた。…バックハグで。

その時私を抱きしめてくれた人が
「もうええよ。あなたはもう十分やったで。」
と。
私はその途端に泣き崩れた。
私を抱きしめた人は私の前来てくれて
そしてまた強く抱き締めてくれた。

その人が、この2人だった。
中間淳太
中間淳太
…あなた?
あなたのせいやない。
俺が子供やったんや。
俺は、俺らは
あなたがいることが当たり前やって
思っとった。
あなたが隣にいるのが当たり前。
あなたを守るのが俺らの当たり前。
あなたと夢を叶えるのも当たり前。
そう思っとったから
あなたの異変に気づけなかったんや。
ごめんな?もしかしたら
あなたが辞める理由や持病を
ちゃんと伝えられなかったのは
俺らがそう言う空気を出してしまった
からや。
“当たり前”っていう空気を
ずっと…醸し出してからや。
言いにくかったやんな。
ごめんな。
あなたは悪くない。
悪くないで…。
桐山照史
桐山照史
……あなた。
もうええよ。
あなた

えっ…?

桐山照史
桐山照史
ふふっ。
…あなたは十分
俺らのことを考えてくれた。
…会いにくかったやんな?
もう今度は会いやすい環境作らなな。
…なぁ?淳太くん!
中間淳太
中間淳太
……あぁ。せやな。
2人は私を優しくゆっくり離し私の頭に手を置いた。
あなた

……んっ?

桐山照史
桐山照史
……連れてくるから。濵ちゃん。
あなた

……っ!

中間淳太
中間淳太
…濵ちゃんもあなたのこと好き。
あなたも濵ちゃんのことが好き。
今やで。あなた。
あなた

…淳太っ。

そんな時、後ろからスタッフさんに呼ばれ
あっくん達は行かなければならなかった。
桐山照史
桐山照史
会えてよかった。
…俺もまた来るわ。
中間淳太
中間淳太
せやな。
あなたの居場所はもう分かったから。
俺も来るわ。
メンバー連れて。
あなた

……楽しみにしとく。

桐山照史
桐山照史
…その時はさ?
あなたの得意なオムライス
また作ってや。
あなた

えっ?

桐山照史
桐山照史
…あの味懐かしかったで。
あなた

……あっ!

そう言えば1度だけあっくんにオムライスを
作ってあげたことがあった。
…私の手料理が食べたいとあっくんが
レッスン終わりに私を呼び止めた。
その頃から私は料理作りにハマっていて
1度だけ崇裕に作ってあげたことがある。
それを見ていたあっくんが嫉妬して
私も崇裕と同じオムライスを次の日作って
持ってきて、一緒に食べた。

その時も美味い!って言いながら
あっくんはスプーンを止めずずっと
パクパク食べて完食した。
あなた

…覚えててくれたの?
すごく前なのに…。

桐山照史
桐山照史
…俺にとっては
最高の思い出やで。
そんな味、忘れる訳あらへんよ。
中間淳太
中間淳太
照史、そろそろ…。
桐山照史
桐山照史
おん。行こか…。
ちょっと寂しいけど
オフの時また来るから。
中間淳太
中間淳太
俺も!行くわ!
あなた

……お待ちしております!笑

2人は最高の笑顔を残したままロケバスに向かった。
横山くんの方を見ると私に大きく頷いてくれた。



もしかしたら横山くん……。
あなた

……わざと置いたの?

私の疑問は静かに消えて
3人が乗っているロケバスを静かに見送った。

プリ小説オーディオドラマ