貴方side
〜現在編〜
今は修羅場と言っても過言ではない。
女子高校生「…………………。」
何故このような事が起きたのかと言うと……
〜30分前〜
大倉くんの悲しいくらい綺麗な笑顔に見とれてた
私を現実に戻らせたのは
2階に繋がる階段を慌ただしく駆け上がってくる
ドタバタとした音だった。
音に気づいた大倉くんは
直ぐに私の方に来てくれて大倉くんは
私の前に来て背中に私を隠してくれて
守ってくれた。
そのまま大倉くんはドアが開くのを待っていた。
そして勢い良く開いた扉に入って来たのは…
勢い良く頭を下げた重岡くん。
大倉くんがなんて返すのかドキドキしていたら
大倉くんはスっと立って重岡くんの近くまで行った。
〜現在編〜
という訳で冒頭に戻る。
私は女子高校生の姿が見えないテーブル席に座って
耳だけで話を聞いていた。
勿論私が座っているテーブル席の反対側には
ちゃんと重岡くんが座っていて
机の上に置いてある私の手を
重岡くんは優しく上から包んでくれている。
今のところ大倉くんは何もせず
女子高校生が皆の問に答えるのを待っていた。
ついに痺れを切らした大倉くんが声を出すと
一気に空気が変わって緊張感が増した。
横山くんがヒートアップしそうだった大倉くんを
宥めた。
すると大倉くんはこっちに向かって歩いてきた。
重岡くんは私の手をまた更に優しく包んでくれた。
……その時だった。
小瀧くんの大きな声が店に響き
大倉くんが急いで振り返ると
底にはテーブル席に置いていたナイフを手に取り
思い切り走って来た女子高校生が居た。
「危ない」
直感で思った私は優しく包み込んでくれていた
手を離して大倉くんを包み込んで私が
大倉くんを守る体制になった。
重岡くんの大きい声がまた店に響き
それと同時にさっきまでは聞こえなかった
色々な音が聞こえて来た。
女子高校生「死ねーーーーーーーーー!!!」
目をつぶってナイフが来るのを待った。
……でも幾ら経っても痛さとか来なくて
瞑っていた目を開けようとしたら
誰かの手が私の目に抑えられていて
目の前が見えなくなった。
多分この手は重岡くんの手で
今も重岡くんが守ってくれてるってことだけが
分かった。
でも……ナイフは?大倉くんは?
ふぅーと息を吐く重岡くんの次の言葉を待っていた。
音だけだから分からないけど
淳太くんとあっくんが女子高校生を押さえつけ
手に持っていたナイフを床に落として
その床に落ちたナイフを神山くんが拾って
小瀧くんと藤井くんが
「警察来た!」「救急車来た!」って叫んで…。
女子高校生は何か叫びながら外に出て
大倉くんも救急隊員に連れて行かれて
私は急にお店が静かになった瞬間に
目の前が見えやすくなって
かと思えば直ぐにまた見えずらくなった。
かと思えば背中を優しくさすってくれたり
頭を撫でてくれた。
上を見上げると重岡くんがいて
私と目が合うと優しく笑ってくれた。
その時分かった。
私は重岡くんに抱きしめられてる。
私が落ち着くまで重岡くんは抱きしめてくれた。
私が落ち着いたのを確認した重岡くんは
優しく私を離して私の手を握ってくれた。
目の下にエクボを出しながら笑う重岡くんに
私も思わず笑ってしまった。
私が立つと一緒に重岡くんも立って
私を呼びに来てくれた神山くんと小瀧くんに続いて
一緒に外に出てあっくん達の方に向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!