貴方side
〜現在編〜
大倉くんに支えられながら2階に来た私は
大倉くんの手伝いの元ベッドに座った。
横から優しく抱きしめてくれた大倉くんは
空いている手で私の頭を優しく撫でてくれた。
何に対しての延期なのか分からず
私は一旦大倉くんの腕の中から抜け出して
大倉くんと目を合わせた。
私の肩に手を置いて私の顔を覗き込む大倉くん。
私はどうしたらいいか分からず
目を合わせていたのを背けて下を向いた。
大倉くんは低く聞いた事のないような声で喋り
静かに立って窓の方に向かった。
大倉くんが開けた窓から眩しいくらいの夕日と
ちょっと肌寒い風が舞い込んできた。
開いていたはずの窓も気が付けば閉まっていて
閉じた窓に被さって閉めるカーテンから漏れる
夕日を眺めていたら突然視界に光が無くなり
その代わりに…
甘くて苦い味がした。
あぁ…私、大倉くんとキスしたんだ。
一旦離れた大倉くんはまた
窓の方に向かって歩きカーテンを開け
窓から見える景色を眺めていた。
私に背を向けたまま喋る大倉くん。
表情とか何も見えなかったから分からなかったけど
でもこれだけは分かった。
大倉くんはきっと下にいる誰よりも
私と崇裕の幸せを願ってくれてること。
大倉くん、ありがとう。
振り返った大倉くんの笑顔は
悲しいくらい綺麗だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。