第13話

11話:自分の思うままに
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2023/03/03 14:12





暗かった。

ただひたすらに。



周りには明かりなどのそう言ったものは無く、殺伐とした空間ばかりが広がっていた。

依然として無惨が足を止める気配はない。


どこまで行くのだろう。





冨岡 (なまえ)
冨岡 あなた
………!?





刹那、無惨から発せられた触手は私の首を貫通した。



冨岡 (なまえ)
冨岡 あなた
………っう“!!




熱いものが血管の中に入り込むのが感覚でわかる。

痛くて、気持ち悪くて、、




自然と涙が出た。





入り込んだ熱いものが身体中で暴れようとする。

得体の知れない恐怖に体全体が震えた。



冨岡 (なまえ)
冨岡 あなた
あ、あっ………っあぁぁああああ““!!


暴れようとする物を押さえつけようとすれば、

耐え難い痛みが私を襲う。


声にならない叫びが喉から出る。






痛い、苦しい、、

___もう抗うのを辞めにして、流れに身を任せてしまおうか。







身体から力を抜く。

それを待っていたかのごとく、熱いものは暴れ始めた。





首、腕、胸、足。





至る所にそれが運び込まれて行くのが分かった。








こうやって堕ちていくのか。

ずっと前から嫌っていた存在の「 鬼 」に。



私の細胞が最後の抵抗とばかりに胸に小さな痛みをもたらした。

危険だ、と。






でも___。

そんな事はもう、どうでも良かった。

痛みなんて、もういらないから。













鬼舞辻 無惨
鬼舞辻 無惨
上手くいったようだな
(なまえ)
あなた
そう、だと思う




鬼へと変化した私に無惨は声を掛けた。

話しをするうちに違和感を覚え始める。




無性に「 何かを口にしたかった 」

飢餓感が身体を支配する。



意識も朦朧とし、目の前が霞む。


鬼舞辻 無惨
鬼舞辻 無惨
お前はもう自由だ
お前がお前の、やりたい様にすればいい



その言葉に背中を押されるように歩き出す。

何かを求めるように。

始めはゆっくりと。でもそれもだんだん早足に変わった。




…………。






村の人
イヤっ!来ないでッッ




ようやく意識がはっきりした頃、目の前には怯える女がいた。

辺りが血生臭い。




自分の手には赤黒く光るものと肉片がこびりついていた。





身体の自由が消えていた。

自分で自分が制御出来ない。



ゆっくりとそのまま歩を進め、女に近寄る。

何の抵抗もないまま女の首に爪を掻き立て横に引く。





赤い鮮血が私の顔を濡らした。

そこでふと我にかえる。







人を殺してしまったと。

「 痛み 」は無かった。






そして気付く。

ここは私たちが暮らしていた集落だと。








村長
た、助けてくれッッ
金ならいくらでも用意するから!!!


そう男は言った。

今目の前にいる鬼が「 あなた 」だと知ったらコイツはどう思うのだろう。

復讐しに来たと思う?



多分きっとそう。

この男が憎くて、反吐が出るくらい嫌いで、恨まなかった日はない。




「 あなた 」

そう呼ぶ姉さんの声がフラッシュバックする。

最後にそう呼んでもらったのはいつの事だろうか。




(なまえ)
あなた
っどうして………どうして姉さんを殺したの
(なまえ)
あなた
どうして、罪もない人間を殺したの
村長
ち、違う!殺すつもりは無かった!!
あの女が何も話さなかったからッッ……


その言葉を最後に男は事切れた。

辺りは血で染まった。



こんなやつ、生きていて良い訳がない。

自分の事しか考えていない強欲なやつだ。



反省して改心していたなら、まだ良かった。

そんな事、期待しても叶わない事なのに。







気付けば周囲に生きている者はだれも居なかった。






胸に手を当てる。

先刻までここにあった痛みはもう、「 無くなっていた 」。














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次回 大正編 最終話 「 貴方が居てくれたから 」仮題

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