向こう側から聞こえた少年の声は、驚きを隠せていなかった。カーテンを開けるこの一歩が踏み出せない。簡単なことのはずなのに。
カーテン越しに聞こえる、優しげな声。それに、思わずいいよ、と言いかけた。しかし、その一瞬を躊躇った。すると、部屋の扉がノックされた。
私が体を強ばらせると同時に、誰も入室許可を出していないにも関わらず、扉は開かれた。そして、向こうから聞こえるのは、数人の足音。私への来客か、彼への来客か。カーテンを開けていない今、どちらなのか予想もできない。
少年はそれだけを言うと、少し空いていたカーテンの隙間を閉めた。いきなりのことに驚きつつ、彼の来客だったのか、とほんの少し安心した。
向こう側から、大きな声が幾つも聞こえる。しかし、その中に少年の声はなかった。
頭の中を何かが走り抜けるような感覚になった。でも、それも一瞬のことですぐに頭痛が襲ってきた。
どこか本能的に、言葉を発してはいけないと思い、必死で声を殺した。その代わりに漏れるのは、小さな吐息。向こう側の声は大きくなるばかり。
段々と、ストレスが溜まっていくのが自分でもわかった。
あぁ、うるさい。ベッドもあるんだから、この部屋にもう一人人がいることは馬鹿でもわかるはず。だけど、そんなこと気づいてもいないのか、気づいていても気にしていないのか、彼らの声が小さくなることは無かった。
しかし、陸都の放った一言で、一瞬にして空気が変わった。時間が止まった。そう感じる程だった。
口々になにか呟くと、一人がため息混じりに指示を出した。
その一言で、一気に退散していく。そして、全員が病室から出て暫くしてから、再びカーテン越しに声をかけられた。同じ言葉を。
今回は、知りたがりが影響して、いいよと言ってしまった。
開きながら、陸都が声をかけてきた。
素っ気なく返すと、陸都は遠慮なしにカーテンを開けた。
そう言いながら。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。