と、廊下を歩いていると。
急に隣の窓から誰かが入ってきた。
赤いパーカーに赤髪、
耳には銀のピアス。
こんな奴、うちの学校には一人しかいない。
小柄なこの男こそ、クラスの中心人物である、
猫塚颯太だ。
てーかどっから入って来てんだよっ!!
窓から風の様に入って来ては、教室に走ってく。
もう、風の妖精か何かなんじゃないの?
その姿が、少しだけ、カッコいいなんて。
何で、今日に限って見えちゃうんだろう。
いいや、そんなわけない。
あんな馬鹿のこと、好きに…
……うん!やめよ!有り得ないし!
少しよそ見をしていたから、
誰かとぶつかってしまった。
耳に響く程の大声で謝られる。
と、足早に立ち去ってしまった女の子。
少しぶつかっただけ、
しかも悪いのは多分よそ見した私。
あんな青ざめて謝るとか…
あーあ、私苦手なタイプ。
私が悪者みたいじゃんか。
と、クラスメイトの明るい二人が入ってくる。
少し笑っていると、
やば、そろそろチャイム鳴るじゃん。
真後ろにその先生が、『ゴゴゴゴ…』
とでも効果音が付きそうな笑顔で立っていた。
皆で声を揃えて『はぁーい』と返して、
授業を受けた。
ちなみに猫塚はチャイムと同時に入って来て、
「ギリセーフ!!」なんて叫ぶから。
先生は「ギリアウト!」と返す会話が面白すぎて
先生にも皆にも、勿論私にも笑われたのであった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。