第22話

置いてきたリュック
89
2020/01/15 09:01
阿彗 時雨
阿彗 時雨
はぁぁ…早く体育館でバレーしたい!
世羅 ひかり
世羅 ひかり
しーちゃん、
よくあの地面で飛べたなぁ。
阿彗 時雨
阿彗 時雨
あー、まぁ、足ちょっと痛かったけど、全然余裕よゆ…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
阿彗!
阿彗 時雨
阿彗 時雨
???
阿彗 時雨
阿彗 時雨
は!?お前硝野さん置いてきたの!?何してんの馬鹿!!
何故か、猫塚は走って私達の元に。


その隣に硝野さんがいないことから、


置いてきたということになる。


私達、と言っても、先生達はもっと前にいるから、


聞こえないとは思うけど。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
阿彗さ、何で庇ったんだよ。
阿彗 時雨
阿彗 時雨
別に、あれでも友達だったし…
というかそれは猫塚もでしょ…?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
俺は男だからいいの!
阿彗 時雨
阿彗 時雨
あはは(笑)
あんたどこでそんなこと知ったの(笑)
猫塚 颯太
猫塚 颯太
はぁ?てめ、喧嘩売ってんのかぁー?
…姉ちゃんが言ってたんだよ!
世羅 ひかり
世羅 ひかり
ほほう、
よく分かってるお姉さんやなぁ。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
阿彗、本当に怪我してねぇんだな。
阿彗 時雨
阿彗 時雨
うん、ありがと猫塚。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
気にすんな。
世羅 ひかり
世羅 ひかり
さて、しーちゃん行くで。
阿彗 時雨
阿彗 時雨
うん、猫塚!下で待ってるから!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
おうっ!
と、また走っていく。
そう、私達もまた歩きだした。


少し、その後、私の口は緩んでいたのに、


数秒後気付いた。


それと同時に、もう一つ大切なことを思い出した。
阿彗 時雨
阿彗 時雨
…あ、しまった。
世羅 ひかり
世羅 ひかり
なんや?
阿彗 時雨
阿彗 時雨
リュック…!
投げ捨てたまま置いてきた!!
世羅 ひかり
世羅 ひかり
えぇ!!何しとんねん!!
阿彗 時雨
阿彗 時雨
ごめん!先行ってて!
ちょっと取ってくる!!
世羅 ひかり
世羅 ひかり
はよしてな!!
阿彗 時雨
阿彗 時雨
うん!!
あぁ…私の馬鹿。


もう少し早く気付けば、


猫塚に取ってきてとか言えたけど…。


と、二人が見えてきて。


でも、何か、話をしていた。






その時、私の足は止まった。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
そ、その…駄目か…な?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
……本当に、私で良いんですか…?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
おう!むしろ硝野さんが良い!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
大好き!硝野さん!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
そ、その…これからも…///
よろしくお願いします!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
真面目だなぁ。(笑)







え?






その時、完全に私の頭の中は空っぽになった。


頭だけじゃない、心も。


何かが無くなった。





これって、二人が、付き合うってこと?


猫塚は…硝野さんが、好きだったってこと?


私は、私は…。


こんなこと最低だけど。






心の内で、もしかしたら、


私にだって気があるんじゃないか、


どうにか、なるんじゃないかって…


私…死ぬほど最低じゃん…






どうしよう、涙が、止まらない。


辛い、辛い、辛い。


こんな初恋…忘れれる筈無いじゃん…!






あぁ、そうだ、夢。





はは、夢を見てたのは…私じゃないか。





くだらない、本当になんかならない、夢を。



気付いたら、涙を拭って、走っていた。
世羅 ひかり
世羅 ひかり
え!?しーちゃ…ん?
阿彗 時雨
阿彗 時雨
ごめ…ん、ひか、り、先行くね…!
世羅 ひかり
世羅 ひかり
ちょ!しーちゃん!!?



その時、ひかりは、


猫塚の所へと走った。


丁度、二人で降りてくる所。
世羅 ひかり
世羅 ひかり
猫塚…今、しーちゃん見なかったか?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
阿彗?なんで?見てないよ?
あ、でもリュック、ほら。
阿彗のリュックをひかりに渡す猫塚。
世羅 ひかり
世羅 ひかり
ごめん、誰にも言わへんから。
今、何の話しとった?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
…あー、勘鋭いねぇ、世羅。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
言ってもいい?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
も、勿論、です。世羅さんなら…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
俺達、付き合うことになった!
世羅 ひかり
世羅 ひかり
…は?
世羅 ひかり
世羅 ひかり
お前、お前…
何てことしてくれたんや…
硝野 紫暮
硝野 紫暮
せ、世羅さん!?
ひかりの目からは、涙が、出て、


猫塚のパーカーを掴みかかっていた。
世羅 ひかり
世羅 ひかり
よりによって、しーちゃんの前で…!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
お、おい、世羅?どうしたんだよ?
世羅 ひかり
世羅 ひかり
…ごめん、何でもないんや…
パッと手を離し、また走っていく。





二人の〝しぐれ〟は、


この日、同じ時間に、


片方は好きな人と結ばれ、


片方は、目の前で同じ好きな人を失った。



夢を、覆して。

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