何故か、猫塚は走って私達の元に。
その隣に硝野さんがいないことから、
置いてきたということになる。
私達、と言っても、先生達はもっと前にいるから、
聞こえないとは思うけど。
と、また走っていく。
そう、私達もまた歩きだした。
少し、その後、私の口は緩んでいたのに、
数秒後気付いた。
それと同時に、もう一つ大切なことを思い出した。
あぁ…私の馬鹿。
もう少し早く気付けば、
猫塚に取ってきてとか言えたけど…。
と、二人が見えてきて。
でも、何か、話をしていた。
その時、私の足は止まった。
え?
その時、完全に私の頭の中は空っぽになった。
頭だけじゃない、心も。
何かが無くなった。
これって、二人が、付き合うってこと?
猫塚は…硝野さんが、好きだったってこと?
私は、私は…。
こんなこと最低だけど。
心の内で、もしかしたら、
私にだって気があるんじゃないか、
どうにか、なるんじゃないかって…
私…死ぬほど最低じゃん…
どうしよう、涙が、止まらない。
辛い、辛い、辛い。
こんな初恋…忘れれる筈無いじゃん…!
あぁ、そうだ、夢。
はは、夢を見てたのは…私じゃないか。
くだらない、本当になんかならない、夢を。
気付いたら、涙を拭って、走っていた。
その時、ひかりは、
猫塚の所へと走った。
丁度、二人で降りてくる所。
阿彗のリュックをひかりに渡す猫塚。
ひかりの目からは、涙が、出て、
猫塚のパーカーを掴みかかっていた。
パッと手を離し、また走っていく。
二人の〝しぐれ〟は、
この日、同じ時間に、
片方は好きな人と結ばれ、
片方は、目の前で同じ好きな人を失った。
夢を、覆して。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!