第9話

恋─紫暮─
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2019/12/28 08:17
朝、目が覚めると、


浮かぶ〝彼〟の笑顔。
次はいつ話せるかな。
また、あの笑顔が今日も見れるのだろうか。
その笑顔が向けられる先が、私でなくても、


きっと満足してしまう自分がいるのだろう。
私は勘が悪い、


少女漫画の主人公なんかじゃないから。


気付いてしまった。


私は、初めて、


恋をした───────




それでも、私は主人公にはなれないから。


この恋は絶対に叶わない。


初恋が叶うなんて、


そんなお伽噺みたいなことは、実際には無い。


あ、
硝野 紫暮
硝野 紫暮
…私はまたネガティブに…
と、一言ぽつりと呟き、


いつもより少し賑やかなクラスに、


ひっそりと入った。


でも、自然に私の動きは止まった。


その理由は、
クラスメイト
猫塚と阿彗って付き合ってるんだって!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
………ぇ…?
こんな失恋の仕方、


私が初めて何じゃないだろうか。
恋だと気付いてすぐに。


私は同時に失恋する。


これも、そうだ。


〝夢〟通りじゃないか。
私は自分の席に着いて、いつも通り本を読む、


フリをしていた。


しばらく、私の頭の中で、


さっき聞いた言葉と、


二人が優しく掛けてくれた言葉が、


何度も繰り返されていた。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
てか何でお前らそんな奴等のこと信じてんの?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
……!
入ってきた、彼の言葉。
私って人に流されやすいのだろうか。


この短期間で、


私はどれだけ彼の言葉で変わっただろうか。
そうだ、噂じゃないか。


きっと、勘違いした誰かが言いふらしたんだ。





…私は、何を自分の良いように解釈してる?


彼に映る私は、数える程しか話していない、


地味なただのクラスメイト。


ただそれだけの私が、


何をしているんだ。
もう…良いんだ。


やっぱり、私には、恋なんか出来ない。


このネガティブな自分も、


可愛くない自分も、


全部全部、嫌いだよ。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
…さん、硝野さん?おーい?
気付くと、私の目の前で手を振っていた。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
…っは、はいっ!
って、えっ、猫塚くん、なんでっ、
猫塚 颯太
猫塚 颯太
何でって(笑)お隣だし、お友達だし、暗そうな顔してたら声掛けるよ(笑)
硝野 紫暮
硝野 紫暮
お、お友達…?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
えっ、違うの?友達だと思ってたのは俺だけだったのか…
硝野 紫暮
硝野 紫暮
いやっ、そ、そういうわけでは…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
じゃあお友達だね!
友達を作るのが上手い人は、皆こうなのだろうか。


彼と話すと、言葉がいつもより数倍出てくる。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
…猫塚くんは、優しいですね…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
優しい?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
はい。誰にでも声を掛けて…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
硝野さん、それは違うよ。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
え?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
俺は自分が声を掛けたい人しか声を掛けてないよ。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
……!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
俺は、硝野さんっていう隣の席の友達が暗い顔をしていたから声を掛けた。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
誰にでも、じゃなくて、友達に。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
だから、暗い顔しないで?
前も言ったでしょ?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
硝野さんには笑顔が似合うって!
…また、猫塚くんの笑顔を見ることが出来た。


しかも、私に向けての。
一つ一つの言葉が魔法みたいで、
私を、笑顔にしてくれるんだ。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
ありがとうございます…!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
うん!やっぱ笑顔が一番!
今は、少しだけ、夢を信じなくても、



良いのかな。

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