朝、目が覚めると、
浮かぶ〝彼〟の笑顔。
次はいつ話せるかな。
また、あの笑顔が今日も見れるのだろうか。
その笑顔が向けられる先が、私でなくても、
きっと満足してしまう自分がいるのだろう。
私は勘が悪い、
少女漫画の主人公なんかじゃないから。
気付いてしまった。
私は、初めて、
恋をした───────
それでも、私は主人公にはなれないから。
この恋は絶対に叶わない。
初恋が叶うなんて、
そんなお伽噺みたいなことは、実際には無い。
あ、
と、一言ぽつりと呟き、
いつもより少し賑やかなクラスに、
ひっそりと入った。
でも、自然に私の動きは止まった。
その理由は、
こんな失恋の仕方、
私が初めて何じゃないだろうか。
恋だと気付いてすぐに。
私は同時に失恋する。
これも、そうだ。
〝夢〟通りじゃないか。
私は自分の席に着いて、いつも通り本を読む、
フリをしていた。
しばらく、私の頭の中で、
さっき聞いた言葉と、
二人が優しく掛けてくれた言葉が、
何度も繰り返されていた。
入ってきた、彼の言葉。
私って人に流されやすいのだろうか。
この短期間で、
私はどれだけ彼の言葉で変わっただろうか。
そうだ、噂じゃないか。
きっと、勘違いした誰かが言いふらしたんだ。
…私は、何を自分の良いように解釈してる?
彼に映る私は、数える程しか話していない、
地味なただのクラスメイト。
ただそれだけの私が、
何をしているんだ。
もう…良いんだ。
やっぱり、私には、恋なんか出来ない。
このネガティブな自分も、
可愛くない自分も、
全部全部、嫌いだよ。
気付くと、私の目の前で手を振っていた。
友達を作るのが上手い人は、皆こうなのだろうか。
彼と話すと、言葉がいつもより数倍出てくる。
…また、猫塚くんの笑顔を見ることが出来た。
しかも、私に向けての。
一つ一つの言葉が魔法みたいで、
私を、笑顔にしてくれるんだ。
今は、少しだけ、夢を信じなくても、
良いのかな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!