第20話

〝誰でも良い〟─紫暮─
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2020/01/12 16:21
先生
先生
で、硝野さん、猫塚くんペア。
それから────
そう言われた瞬間、


久しぶりに心の底から嬉しくなった。


皆は「良かったね」と言ってくれているけど、


その裏では私を妬ましく思っている人も、


いないはずは無いと思う。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
おっ、硝野さん!よろしく!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
は、はい!よろしくお願いします!
彼の笑顔は安心する。


だからいつもより少し声がはっきり出た。




そしてダンスの曲が聞こえてくる。


あぁ、今更になって緊張してきた…!


手を繋ぐような動作もあるし、


手汗とかどうしよう、なんて、


また段々ネガティブな考えに陥っていく。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
もしかして…緊張してる?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
へっ!?い、いや!そんな…!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
硝野さん嘘ヘタ(笑)
硝野 紫暮
硝野 紫暮
す、すみません…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
謝らないで、気楽に行こ(笑)
猫塚 颯太
猫塚 颯太
大丈夫大丈夫、踊る内に慣れるよ。
と、猫塚くんの言葉はまるで魔法のよう…


なんて言ったら、少しお伽話みたいだけれど、


本当に段々緊張が解けて、


いつしか、自然な笑顔で踊れていた。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
硝野さん!笑顔かーわいー!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
かわっ…!!
な、何言ってるんですか…!
と、自分の顔が段々と熱くなる。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
かっ、からかわないでください…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
ごめんごめん(笑)硝野さんって無性にイジリたくなるんだよね(笑)
硝野 紫暮
硝野 紫暮
そ、そんなに変な顔でしょうか…。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
違う違う!
それくらい真面目で素敵~ってこと!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
あ、ありがとうございます…////
楽しい時間と言うのはあっという間で、


終わりのハイタッチを迎えて、


終わってしまったのだった。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
猫塚くん、ありがとうございました。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
こちらこそー。
町谷 朔
町谷 朔
猫塚ー、バンガロー戻るよー。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
今行くー!あ、硝野さん!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
はいっ!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
おやすみなさい。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
…!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
お、おやすみなさい!
私の声に反応して、手を振ってくれた。


一言だけじゃない、何度も話せた。


それが、どれだけ嬉しいことか。








ドンッ!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
あっ…す、すみませ…
咲希
咲希
硝野さん、ちょっと…良い?
肩がぶつかり、謝ろうとしたら。


目の前には、三人の女子。




…あれ?


この感じは、知っているな。
美愛
美愛
あのさぁ、いくらなんでも調子乗りすぎだーっての(笑)
羽華
羽華
猫塚を好きなのは、アンタだけじゃないの、分かるでしょ?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
そ、そんな、少しお話を…!
美愛
美愛
はぁ?てかさぁ、猫塚がアンタみたいな地味女、好きなわけないでしょ?
咲希
咲希
どうせ、少し話し掛けられたから、
勘違いしちゃったんでしょ?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
ち、違…
羽華
羽華
何が違うの?
美愛
美愛
やめなよ(笑)あれでしょ?
〝誰でも良いんでしょ〟
その言葉を聞いて、私の線が、一本。


プチリと切れた音がした気がした。
あ、また。


随分前に見た、あの夢が。


頭の中に、蘇る。


やっぱり、少し、夢を、


見すぎてしまったかもしれない。

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