そう言われた瞬間、
久しぶりに心の底から嬉しくなった。
皆は「良かったね」と言ってくれているけど、
その裏では私を妬ましく思っている人も、
いないはずは無いと思う。
彼の笑顔は安心する。
だからいつもより少し声がはっきり出た。
そしてダンスの曲が聞こえてくる。
あぁ、今更になって緊張してきた…!
手を繋ぐような動作もあるし、
手汗とかどうしよう、なんて、
また段々ネガティブな考えに陥っていく。
と、猫塚くんの言葉はまるで魔法のよう…
なんて言ったら、少しお伽話みたいだけれど、
本当に段々緊張が解けて、
いつしか、自然な笑顔で踊れていた。
と、自分の顔が段々と熱くなる。
楽しい時間と言うのはあっという間で、
終わりのハイタッチを迎えて、
終わってしまったのだった。
私の声に反応して、手を振ってくれた。
一言だけじゃない、何度も話せた。
それが、どれだけ嬉しいことか。
ドンッ!
肩がぶつかり、謝ろうとしたら。
目の前には、三人の女子。
…あれ?
この感じは、知っているな。
その言葉を聞いて、私の線が、一本。
プチリと切れた音がした気がした。
あ、また。
随分前に見た、あの夢が。
頭の中に、蘇る。
やっぱり、少し、夢を、
見すぎてしまったかもしれない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!