第3話

悲しい夢
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2019/12/20 09:03
夢を見た。


それはとても悲しい夢で。
初恋の相手が、奪われてしまう話。


奪われる?


いいや、違う。


私が臆病で、告白も出来ずに、


ただ呆然と立ち尽くす、私の恥ずかしい姿。
そうだよ、私は恋なんか、しちゃいけない。


したって、絶対、叶わない。


こんな顔で、こんな姿で。


高校生活二年目でも、友達はゼロ。
やめよう、真面目に授業を受けて、


あと一年と半年程を静かに過ごしていけば良い。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
学校…行かなきゃ。
浮かない顔、笑顔が作れない、高い身長。
勉強しか取り柄の無い私に、


振り向いてくれる王子様はいないから。
それに比べて、クラスにいる、


もう一人の「しぐれ」さんは、


面白くて、優しくて、皆の人気者で。


スポーツ万能で、それでいて可愛い。


お友達も沢山いる。


どれだけ私と違うところがあるだろう。
何度か話しかけてみようとはした。


でも、喉につっかえて、声が出なかった。
もしも、私なんかが友達になったとして、


いじめられてしまったら?


逆に阿彗さんがいじめられてしまったら?
いや、こんなネガティブな思考だからこそ、


一人も友達がいないのだろう。
そんな風に学校は憂鬱に過ごす。


だけど、今日は。


廊下で阿彗さんとぶつかってしまった。


「え?」なんて返されて、


私は明日からいじめられてしまうのではないか。


謝り方が悪かったのかな…


そう二時間目も過ごしていた。


思わず、小さな溜め息が溢れてしまって。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
はぁ…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
…?えっと、ショウノさん?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
はっ、はい……
ビックリした。


隣の席の猫塚くん…。


彼も阿彗さんと同じくらい皆の人気者で、


休み時間はいつも皆が集まってくる。


そこでクラスメイトの人とぶつかることも多い。
そんな彼が、私に…?
猫塚 颯太
猫塚 颯太
溜め息ついてどーしたの?
と、教科書を盾にするように机に突っ伏す形で私を見る。
硝野 紫暮
硝野 紫暮
い、いえ、大したことではないです…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
そー?いっつも一人で寂しいなら俺に言って!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
そ、そんな、ご迷惑になりますし…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
迷惑って?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
私なんかが猫塚くんといたら…
変ですし…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
じゃあお昼一緒に食べよ!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
そ、それこそご迷惑に…!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
あれ?知らない?
俺いつもお昼は一人だよ?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
…え…!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
じゃあ誰にも言わない約束で俺の秘密の場所で食べよ!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
い、良いんですか…?
嬉しすぎて、少し手が震える。


嫌な夢を見た日なのに、こんなことあっていいのか。


いつぶりだろうか、


こんなにクラスメイトと話をしたのは。
猫塚 颯太
猫塚 颯太
良いんですか、じゃなくて、
俺が来てって言ってるの!ね?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
は、はい…
先生
先生
猫塚!硝野さん巻き込まない!
授業ちゃんと聞きなさい!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
えー!!何で俺だけ!
先生
先生
どうせ話し掛けたの猫塚でしょ!
美愛
美愛
何やってんの~(笑)
世羅 ひかり
世羅 ひかり
せんせー!アホはほっといてはよ授業しようや~!
猫塚 颯太
猫塚 颯太
アホ!?
先生
先生
…そうしますか。
はい、じゃあ教科書の…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
先生あっち暴言!!
先生
先生
静かにっ!
硝野 紫暮
硝野 紫暮
あ、あの、猫塚くんごめんね…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
俺だけ怒られたから?
硝野 紫暮
硝野 紫暮
はい…
猫塚 颯太
猫塚 颯太
そーいうのは気にしないで!
ニシシッと私に笑い掛けてくれる猫塚くんは、


どこかカッコ良くて、胸が少し痛くなった。
この痛みは、一体何なのでしょう…。


その正体に気付くのは、案外早くて。

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