第17話

10話
700
2022/08/31 11:00


 なかのっち
君たちは『特異点』って知ってる?
 なかのっち
勿論、数学用語としてでは無く。
瀬戸あさひ
特異点……?
 なかのっち
特異点って言うのは、本来なら存在しないはずの過去の事。
 なかのっち
そうだね、例えば…。
 なかのっち
日本の歴史だと、織田信長が本能寺の変で亡くなったり、幕末で大政奉還が行われたり…。
 なかのっち
そういった確定された過去が、歴史介入によって全く別の歴史に変わってしまうこと、と思ってくれればいいかな。
 なかのっち
過去の歴史が変わってしまったら、勿論俺たちの今いる未来も変わってしまい、別の未来が確定し、今この世界は消滅…なかったことになってしまう。
 なかのっち
それが今、起きてしまっているんだ。
 なかのっち
だから君たちは過去に行ってその現況を直さなくちゃならない。
瀬戸あさひ
それはつまり、過去に行くってことか?
 なかのっち
ああ。その過去に行くための装置?的なものが、アメリカにある。
 なかのっち
本当なら、この特異点を修復すれば元に戻るんだけど…。
 ねろちゃん
……まだ何かあるのか?
 なかのっち
……ああ。この地球で起きているのは、それだけじゃない。
 なかのっち
特異点が起きたせいで、歴史が変わってはいるんだが、それでも本来起きるはずのない『もしも』が起きてしまっているんだ。
なかのっち
……どゆこと?
 なかのっち
その特異点とはまた違う、『何かしらの巨大な事件などを契機に、全く別の歴史を歩んだ世界』が誕生してしまった。
 なかのっち
それを『異聞帯』と呼んでいる。
瀬戸あさひ
え?どゆこと?
 なかのっち
これまでに紡がれてきた人類史を「汎人類史」と呼び、その過程で切り捨てられ、また並行世界としてさえ分枝を許されず足切りされた「有り得ざる歴史の断片」。 それが異聞帯。
 なかのっち
汎人類史に組織された歴史を「勝者」とするなら、異聞帯は汎人類史に編纂へんさんされなかった「敗者」ともいわれる。 
瀬戸あさひ
本来なら絶対にありえない歴史ってこと……?
 なかのっち
簡単に言うならな。
 なかのっち
異聞帯の世界は、剪定事象に区分されるはずだった歴史が、その時代に剪定されずに現在まで続いてしまったという、いわば「ありえたかもしれないが全く別の人類史」ってことだ。
 なかのっち
特異点との明確な違いとして挙げられるのが、特異点が「歴史の分岐点」であるなら、異聞帯とは「すでに特異点をとっくに通り過ぎていて、いわば特異点がそのまま続いた状態の現代」であること。 
 なかのっち
もっと噛み砕いて説明するなら、
 なかのっち
特異点は「今の自分たちの歴史の中の、ある1点が捻じ曲がろうとしている」もの。
 なかのっち
異聞帯は「ある1点で捻じ曲がった結果、自分たちとは全く違う歴史になった」もの。
 なかのっち
特異点はあくまで自分たちの歴史の一部が捻じ曲がろうとしているだけであり、その世界にいる人は「元々自分の世界にいる人」。
 なかのっち
特異点を消滅させようが、その人たちが体験した事や辿った人生がいくらか変わるだけで、自分たちの世界そのものを消す訳じゃないので、人々が消えるわけじゃない。
 なかのっち
 一方で異聞帯は「ある点から派生してしまった別世界」。
 なかのっち
その世界で辿った歴史でないと生まれてない人や村・国も当然ある訳で、自分たちの世界とはそもそも存在するものが別もの。
 なかのっち
異聞帯を消すというのは平行世界そのものを1つ消す事であり、消せば当然異聞帯にいる人は消滅する。
 なかのっち
って所かな。
瀬戸あさひ
?????
なかのっち
?????
 なかのっち
はははwまぁわかんないよなw
 なかのっち
今この地球で起きている特異点と異聞帯は、イレギュラーなんだ。
 なかのっち
この今の地球は、特異点が生じ、そしてさらにその特異点がねじ曲がり、全く別の世界になってしまった世界なんだ。
 なかのっち
特異点が更なる特異点を産み、異聞帯になる…本来なら 絶対にありえないこと  ・  ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・  ・  ・が起きてしまっている。
 なかのっち
今この地球で起きている特異点は、どの未来も人類滅亡の未来を辿ってしまう。
 なかのっち
そのはずなのに、異聞帯とかいう意味わからないものができてしまった。
 なかのっち
その理由までは分からないけど、君たちがやらなくちゃいけないことは、異聞帯を壊し、その元凶になったであろう特異点まで修復しなくちゃいけない。
 なかのっち
……さっきも言ったとおり、南極の聖杯は君たちが他の全ての聖杯を壊すことが出来たら、それまでに俺が聖杯を見つけて、君たちにここの聖杯を渡そう。
 なかのっち
……と言っても、君たちがこの世界を救いたいと思えるのなら、だけど。
瀬戸あさひ
え…?
 なかのっち
ここから先の戦いは、地獄になる。確実に。
 なかのっち
たとえこの世界を救えなくても、誰も君たちを責めたりはしないさ。
 なかのっち
だってこの戦いは、歴史に残りはしないのだから。
 なかのっち
誰も知らない。だって、消えた人達はみんな自分が死んだ、なんて感じることすら出来ないまま死んでいったんだから。
 なかのっち
それでも救いたいと、この世界は救う価値のあるものだと言うのなら、戦うといい。
瀬戸あさひ
………。
なかのっち
………。
 ねろちゃん
………。
瀬戸あさひ
…俺は、やるよ。
なかのっち
瀬戸…。
瀬戸あさひ
たとえこの先に待つのが地獄だったとしても、俺は戦う。
瀬戸あさひ
…そう、決めたんだ。
なかのっち
俺も!
なかのっち
俺も、守りたいものがあるんだ。
なかのっち
だから戦う。
瀬戸あさひ
のっち…。
 なかのっち
……そっか。
 なかのっち
なら、最後まで足掻いて足掻いて足掻きまくるんだな。
 なかのっち
そうすればきっと、神様は君たちの味方をしてくれるかもね。
瀬戸あさひ
ああ、足掻いてみせるさ。
なかのっち
最後まで諦めずに、全力で足掻いてみせる。
 ねろちゃん
………。
 なかのっち
そんな君たちに、もうひとつ情報を。
 なかのっち
アメリカに行けば、もっと詳しくこの世界の現状を教えてくれるだろう。
 なかのっち
> 挿入されたアイテム

帰りの道中にて


 ねろちゃん
…どうだった?なかの。もう1人の自分に合って見た感想は。
なかのっち
えっ……。
なかのっち
…う〜ん…最初は驚いたけど…特に何も思わなかったかな。
瀬戸あさひ
でも、不思議だよな。
瀬戸あさひ
俺たちと似た吸血鬼が居るなんて。
なかのっち
それもそうだよな。実感薄いけど。
 ねろちゃん
……なぁ、瀬戸。
瀬戸あさひ
ん?
 ねろちゃん
この世界の俺は、どんなやつだった?
瀬戸あさひ
…そうだな…。
瀬戸あさひ
たまにふざけるけど、仲間思いの良い奴だったよ。
瀬戸あさひ
人一倍敏感で、隠し事しても直ぐにバレてたな。
 ねろちゃん
……そうか。
なかのっち
へぇ…。
なかのっち
記憶がなくて実感無いけど、良い奴なんだな、ねろちゃん。
瀬戸あさひ
……ああ。




















モルガン
……よかったのですか?
 なかのっち
ん?
モルガン
あの事を彼に言わなくて。
 なかのっち
…言ったとしても、記憶が無い今のあいつじゃ意味ないから。
モルガン
…そうですか。

















彼らに残された生き残るための手段。


それは、特異点と異聞帯にあるという聖杯の破壊。


これから彼らを待ち受ける試練の真相は、一体。







to be continued…



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