第13話

閑話 アヴァロン・ル・フェ 中編
1,167
2022/08/19 15:00



図らずも、マシュの助けで調査にあたることのできた、キャメロットにある不気味な大穴。


その奥深くにある炎。


祭神ケルヌンノスの死骸。


私はこの驚異に対して、ブリテンが統一された後、

ウーサーくんと相談して、対処に当たることを決めた。


しかし。





トネリコ
はぁ…はぁ…あぁ…!
トネリコ
あぁぁぁぁあ!
トネリコ
なんで…なんで…!なんで…!!
トネリコ
ブリテンで一番めでたい日だったのに…!
トネリコ
何もかも良い方向に生まれ変わる日だったのに…!
トネリコ
失敗する度に立ち上がって、何千年もかけて頑張ったのに…!
トネリコ
…ねぇ…ここでも駄目なの…?
トネリコ
ここまでやっても駄目なの…!?
トネリコ
私に、ブリテンは救えないの…?
トネリコ
…っ私には、ブリテンは与えられないの…?
トネリコ
…ぅ…ぁあ…ぅ…ああぁぁぁ…!
トネリコ
……許さない。
トネリコ
許さない!
トネリコ
アイツらを、絶対に許さない!












トネリコ
はぁ…はぁ…はぁ…
トネリコ
っふふ…あはは…あははははは!
トネリコ
…もう、散々裏切られて、思い知ってきたはずなのに。
トネリコ
私はまだ、一縷の希望を抱いて、そんなことにかまけている暇なんてあったから、今回も失敗した。
トネリコ
ブリテンを存続させたいのなら、救うなんて方針が間違っていた。
トネリコ
…もう辞めよう。
トネリコ
救世主なんてやめにしよう。
トネリコ
もっと別の、優れた形式を考えよう。
トネリコ
…そうだ。私は妖精たちを救わない。
トネリコ
私は妖精たちを許さない。
トネリコ
アヴァロン・ル・フェの指名なんて、どうでもいい。
トネリコ
ただ支配する。
トネリコ
…それだけで、よかったんだ…。
トネリコ
……この空想を終わらせて、私は私の夢を叶えてやる。
トネリコ
異聞なんて言う、「もしも」じゃなく、私のブリテンを。
トネリコ
この星に縫い付けるんだ。















トネリコ
ロンディニウムは滅びました。
トネリコ
結局、あなたの言うとおりになりましたね、マシュ。
トネリコ
…無意味だったんです。
トネリコ
私たちの巡礼は。
マシュ
無意味だなんて、そんなことは…!
トネリコ
…そんな悲しい顔をしないでください。
トネリコ
トネリコが失敗するのは、避けようのないことだったのでしょう。
トネリコ
それが、ちょっと…私には耐えられない結末だっただけで。
マシュ
トネリコさん…。
トネリコ
…それに、白状してしまうと、私はこの結末を知っていました。
トネリコ
マシュさんのいた、西暦2017年。
トネリコ
ブリテンで言うと、妖精歴102017年ですけど。
トネリコ
この時にはもう、滅びていたんです。
トネリコ
私はそれが嫌で、マシュさんのように、未来から妖精歴にやって来ました。
トネリコ
………。
トネリコ
トトロットが小舟を探してきてくれたようです。
トネリコ
さぁ、行きましょう、マシュ。
トネリコ
……いえ、初代妖精騎士、ギャラハッド。
トネリコ
それが、これから棺に入る、あなたの名前です。














トトロット
…もう、仕方ないなぁー。
トトロット
そんなに不安なのかい?
トトロット
…なら、約束をしよっか。
トトロット
とっておきの約束。
トトロット
マシュがここに来たことは、間違いじゃなかったって、証明する約束だ。
マシュ
とっておきの約束、ですか?
トトロット
マシュは僕に夢をくれた。
トトロット
僕の夢はね、君の花嫁姿を見ることだ。
トトロット
それをくれた君を、僕はずっと見守り続ける。
トトロット
来てくれてありがとう、って思い続ける。
マシュ
……っ!
トトロット
だから安心して、ここで待っていて。













トネリコ
…トトロットとのお別れは済みましたか?
トネリコ
……そうですか。そんな、約束を。
トネリコ
いいですか、ギャラハッド。
トネリコ
これは、あなたの目覚めたあとの話です。
トネリコ
あなた達カルデアが、もしモルガンの築いた妖精國を切除出来たのなら。
トネリコ
その次あなたに待つ戦いは、私と同じ戦い。
トネリコ
自分の心との折り合い。
トネリコ
人生の解析です。
トネリコ
あなたには、戦う理由がありますが、戦う意思が希薄でした。
トネリコ
他人を、世界を傷つける力から、それは良くないものだと無意識に逃げていた。
トネリコ
…でも、人は誰でも、他人を傷つける自由があり、また責任を持っている。
トネリコ
人間は、良いことをしたいのではありません。
トネリコ
良い明日のために、最善を選び続ける生き物です。
トネリコ
…そして、その選択にはどれほどの人が救われようと、正解は無いのです。
トネリコ
…でも、どんな素晴らしい人間でも、争わないという心はない。
トネリコ
戦いは、どんな心にもある。
トネリコ
どうか、それを忌避しないで。
トネリコ
あなたの胸の空白が、自分だけの戦う理由に埋められた時、
トネリコ
英霊ギャラハッドは再び、あなたに全てを託すでしょう。
マシュ
…争いのない、心はない…。
マシュ
それは、どんなものであれ…。
トネリコ
そう。
トネリコ
目覚めた時には忘れているだろうけれど、その時がきたら、思い出すようにしておくね。
トネリコ
私のように違うものに変わるのか、あなたのままで、新しく成長するのか。
トネリコ
そればかりは、私にも先読みできないことだけど。
トネリコ
………。
トネリコ
それじゃあ、ここでお別れ。
トネリコ
あ、でも気をつけて。
トネリコ
あなたが目覚めた時、私と再会したとしても、私はあなたの事を一切知らないから。
トネリコ
…多分、その時の私は、トネリコじゃなくなってるから。
マシュ
……っ、トネリコさん!今まで、ありがとう、ございました…!
マシュ
…例え、結果はわかっていたとしても、あなたの旅は、救世主の名に恥じないものだったと、私は思います!!
トネリコ
……!
トネリコ
…まぁ、そうだよね!頑張ったもんね、私たち!
トネリコ
…さようなら。確定した未来から来た勇敢な騎士。
トネリコ
その功績に免じて、私も秘密を明かしましょう。
トネリコ
……私の名は、モルガン。
トネリコ
このブリテンを救う使命を持って、星の内海から流れ着いた、アヴァロン・ル・フェ。
トネリコ
そして汎人類史においては、アーサー王の仇敵として、ブリテンを滅ぼした魔女。
トネリコ
…はるかな未来において、あなた達カルデアが倒すべき、異聞帯の王の名です。







そしてマシュは、初代妖精騎士として、眠りについた。





to be continued…











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