第7話

一世一代の告白
千都世の言ったことの意味を、俺は懸命に理解しようとした。


女慣れしている、と言われているような気がしたけれど、気のせいだろうか。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
え? どういう意味?
菅原 千都世
菅原 千都世
だって……。
この前も、女の子に告白? されてたし
番場 悠一郎
番場 悠一郎
あれは、クリスマスに誘われただけで、しかも断ったけど
菅原 千都世
菅原 千都世
それだけじゃなくて。
悠一郎はモテるって、クラスの子が言ってた

千都世は無意識かもしれないが、唇を尖らせている。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(もしかして、嫉妬してる?)

俺に他の女の子の影が見えても、千都世は気にしないのかと思っていた。


ニヤニヤしそうなのを必死に耐えて、喜んだのも束の間。


これはまずい状況であることに、ようやく気付いた。


千都世は、俺が女の子の扱いに慣れていると、勘違いをしている。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(頑張って、言うんだ。俺……!)

繋いだ手に力を込めると、千都世の顔がこちらを向いた。


目が少し潤んでいて、寒さで頬と鼻が赤くなっている。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(か、かわいい。だけど、それは今置いといて)

一旦深呼吸をして、言葉を探す。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
全然慣れてない。
手を繋いだのは千都世が初めてだし、これから先も千都世だけのつもりだけど……
菅原 千都世
菅原 千都世
ん? なに?

反論は、途中から声がしぼんでしまった。


声は街の喧噪でかき消され、千都世に全部は聞こえていなかったようだ。


どうして、俺はこんなに情けないのだろう。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
と、とにかく。
俺は、誰とも付き合ったことはないから
菅原 千都世
菅原 千都世
……そうなんだ。
そっかぁ。
なんだか、変なこと言ってごめんね?

千都世は、ほっとしたように笑った。


その表情がまたかわいくて、今にも抱きしめたいほどだ。


でも、ここは余裕のある対応をしなければ、また『弟』に見られてしまう。


俺は、顔を赤くしているのを見られたくなくて、そっぽを向いた。



***



最後にイルミネーションを見て帰る予定だったけれど、日が完全に落ちるまで時間がある。


そこで、書店で時間を潰すことになった。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(これなら、千都世が好きそうだな)

千都世が「クリスマスプレゼントとして、お互いに選んだ本を一冊、プレゼントしようよ」と提案したのだ。


幼稚園で親の迎えを待つ間、俺たちはよく絵本を読んでいた。


その時から、ふたりとも読書好きなのだ。


千都世に見られないよう、一冊を選んで、ラッピングしてもらった。
菅原 千都世
菅原 千都世
悠一郎、選び終わった?
番場 悠一郎
番場 悠一郎
ああ。
はい、これ
菅原 千都世
菅原 千都世
わあ、ありがとう。
じゃあ、私からはこれね
番場 悠一郎
番場 悠一郎
ありがとう。
楽しみにしてる

本の内容は家に帰ってからのお楽しみということで、それぞれ鞄にしまった。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
それじゃ、イルミネーションを見たら帰ろう
菅原 千都世
菅原 千都世
……うん

どちらからともなく、再び手を繋ぐ。


他愛のない会話をしながら、目的地に向かう間も、俺の頭は告白のことでいっぱいだった。
菅原 千都世
菅原 千都世
きれいだね……。
わ、あっちの模様が変わったよ!
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(キザなやつだったら、「千都世の方が綺麗だよ」とか言うんだろうな)

絶対に、そんな甘い言葉は出てこない。
菅原 千都世
菅原 千都世
悠一郎? なんか、さっきから元気ない?

一通り見終わった後、俺は一度深呼吸をした。


この鈍感な幼馴染みには、直球ストレートを投げないと受け止めてもらえない。


もう、逃げるのはやめだ。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
俺、千都世が好きだ

はっきりと、千都世の耳に聞こえるように、俺は一世一代の告白をした。


【第8話に続く】