第6話

クリスマスデート
二日後、クリスマス当日。
菅原 千都世
菅原 千都世
(あんまり眠れなかった……)

悠一郎と出掛ける予定だと母親に話したところ、「それはデートね!」とはやし立てられてしまった。


うっすらと、そうじゃないかとは思っていたけれど、悠一郎はどんなつもりだったのだろう。
菅原 千都世
菅原 千都世
(でも、誘ってもらえて、嬉しかったんだもん……)

支度を終えて、家の前に出たところで、時間ぴったりに悠一郎が迎えに来た。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
おはよう
菅原 千都世
菅原 千都世
おはよう。
今日はどこに行くの?
番場 悠一郎
番場 悠一郎
少し遠くに出る。
まずは駅に行こう

悠一郎の私服くらい見慣れているはずなのに、直視するのが難しい。
菅原 千都世
菅原 千都世
(うう、緊張する)

こんなに大きくなってから、ふたりきりで出掛けるのは初めてのこと。


加えて、これがデートだなんて思ったら、どうしたらいいのか分からない。



***



電車を降りて到着した街は、クリスマス一色だ。


どこもかしこも人が多く、街路樹にはカラフルな電飾が施され、あちこちから楽しげな定番曲が聞こえてくる。


イルミネーションに気を取られてよそ見をした時、反対側から歩いてきた人にぶつかってしまった。
菅原 千都世
菅原 千都世
すみませっ……わわっ!
番場 悠一郎
番場 悠一郎
危ないっ

バランスを崩して車道側に倒れかけた私を、誰かの腕が支えた。


腕と腰をがっちりとつかまえられている。


もしかしなくても、これは……。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
大丈夫?
菅原 千都世
菅原 千都世
う、うん。
ありがとう

やっぱり悠一郎だった。


電車の中でもそうだったけれど、悠一郎は自然に私を助けて守ってくれる。


今までなら、年上の私の方が、悠一郎を守って導いてあげないといけないと思っていたのに。


近所にいる幼馴染みの『姉』としてではなく、ひとりの女性として、大事にしてくれているように感じる。
菅原 千都世
菅原 千都世
(あ……また心臓がうるさくなってきた)

鼓膜まで、心音が響いている。


悠一郎は、この二日間でたくさん下調べをしてくれたようで、「次はこっち」と私を引っ張ってくれた。


昼食の場所は、行列のできる人気のカフェ。


食後には、クリスマス限定ケーキが出てきたし、喜んで写真を撮る私を、悠一郎は笑いながら見ていた。


その次は、クリスマスの特別展示がされている美術館を訪問。


普段とは違う雰囲気の中、外の喧噪けんそうを少しの間忘れて楽しめた。


そして、夕方にさしかかってきた頃に、ショッピングモールへ。


悠一郎の案内で行くのは初めての所ばかりで楽しくて、私も自然と笑っていた。
菅原 千都世
菅原 千都世
(やっぱり、これって……デート?)

母の言っていたことを思い出す。


端から見たら、私たちは恋人同士に見えるのだろうか。


そうやって考え事をしていたら、またも人にぶつかってしまった。
菅原 千都世
菅原 千都世
きゃっ!

今度は悠一郎の胸に倒れこんでしまい、私は慌てて離れた。
菅原 千都世
菅原 千都世
ご、ごご、ごめん!
番場 悠一郎
番場 悠一郎
大丈夫? ってか、ちょっとぶつかりすぎだから……手、繋ぐ?

大きな手のひらが、目の前に差し出された。


昔は、よく手を繋いで幼稚園の行き帰りをしていたけれど、今は意味合いが変わってくる。
菅原 千都世
菅原 千都世
(どうしよう)

繋いでみたい——でも、恥ずかしい。


そんな感情の天秤をぐらぐらさせつつ、悠一郎の顔と手を何度も往復して見つめた。


悠一郎も、唇を歪めているところを見ると、引っ込みがつかなくなってしまっているのかもしれない。
菅原 千都世
菅原 千都世
(こうなったら、やけだ!)

私は思い切って悠一郎の手を取った。


悠一郎は、わずかに体を跳ねさせたけれど、すぐに優しく握り返してくれる。


記憶していた手とは全く違う、大きくて温かな手。


歩き出したはいいものの、ぎこちなさが残る。
菅原 千都世
菅原 千都世
あ、あのさ。
悠一郎って、こういうのに慣れてるの?

女の子にモテるのなら、デートだってしたことがあるかもしれない。


単なる好奇心と話題作りで、私はそう聞いてしまった。


【第7話へつづく】