兄さんは12階建てのマンションに住んでいた。
号室は609。
間取りは2LDKで、一人暮らしには広いくらいだった。
そんな兄さんは、マンションの屋上から飛び降りて自殺したと“言われている“
が、その忌々しい事件には真相があり、それは俺だけが知っている...
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5年の前のある日、二週間も音信不通になった兄さんを心配して、夜中に兄さんのマンションに訪れた。
俺の大学から近いこともあり、週に一度は通っていたのだが、その頃は兄さんが忙しかったらしく、家にあげてもらうことはなかった。
その上、二週間も音信不通になれば、誰だって心配するだろう。
...ただ心配なだけだった。
...それだけだった。
...それなのに...俺は、“見てしまった“んだ。
────マンションの屋上から、髪の長い女に背中を押され
落ちていった兄さんを...
当時はただただ怖くて、咄嗟に逃げただけだった。
けれど、証拠を掴まなければ、兄さんは自殺したと処理されてしまう。
焦っていた俺は、とりあえず犯人を遠くから撮った。
…その写真が...この行動が...全てを変えるとも知らずに。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。