それなら、兄と一緒に死にたくて自殺したのか...?
それとも事故...?
…生きていようが死んでいようが関係ないな。
俺はあの女に制裁を下すのみ。
最近金銭感覚が危うくなってきたから、バイトを始めた俺は、バイト先へ向かいながら考える。
まず、あの女の情報が少なすぎる。
まるで戸籍がないかのように。
存在を誰からも認識されていないように。
…まるで死んでいるかのように。
あの女が死んでいたらどうするかな。
ゴミ女を産んだ両親から病ませようか。
…ん?そういえば、両親や親族の話も調査結果から出てないな…
考えれば考えるほど、謎は深まるばかり。
「…まあ地道にやるしかないよな。
…確実に潰すために。」
バイト先に着いた俺は、仮面を被ったつもりで、ニコニコ接客を行う。
毎日ただただあの女を恨んで考えて過ごすこの日々。
もしあの場面に遭遇してなかったら、兄の命をも背負って、けれども、楽しく過ごしてたのかな、なんて考えたりもする。
知らない方が幸せ…とはこのことを言うのかもしれないな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。