第11話

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15,027
2018/07/30 11:55



ぼんやりとした景色。



瞼がとても重い。



...日が眩しいから、朝だろうか。









...ん? 日が眩しい?










違和感を感じ、目をぱちりと覚ますと、そこは自分の部屋だった。






...あれ、私、今まで何してたんだっけ。







...早く、学校に行かないと。







なんだろう、意識がふわふわしてる。






...自分が、ここに存在していないみたいに。
















...ここは、現実なのかな。








…違う、多分、何か忘れてる。







逃れたいけど、逃れようのない何かから、目を背けてるように感じる。

























...『私がいる世界は、ここじゃない。』



























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「...きろ...ろ...お...」







あぁ、煩わしい声が聞こえる。







これが私のいる世界だ。








……このまま、何も聞こえなかったフリをしてずっと目を瞑っていたい。


















「...目を覚ましてるんだろ。早く起きろ。」







どうやら、思うようにはいかないらしい。






「...おはようございます。」








...また、一日が始まる。























「...ほら、早く立って。朝ご飯を食べよう。」









「...え?」










「...手錠とか、全部外したから。」









「...もう縛ったりしない。」










「...君が、自暴自棄になった時に気づいたんだ。






僕が伝えたい愛は、君の苦しめることじゃないってことを。







今までたくさん、傷つけた。






...本当に、ごめん。」













よく見れば、窓がひらけて、わずかな光が差し込んでいる。





電気もつけられ、暗い箇所はなかった。





















...私は、彼から解放されたのかもしれない。










これもまた、夢なんじゃないかと、手元を見ると、手錠はついていない。












「...手錠の痕が、痛々しいね...」







「自分の好きな子に、こんなことさせて...



一体僕は、何をしていたんだろう。」











私を苦しめる事が愛だと勘違いしてた彼は、劇的に変化していた。




私が眠っている間に、何があったんだろう。



























とにかく、私は、この長い長い苦しみから解放された。








彼の人格は元に戻ったように感じる。









家に帰れる日は、そう遠くないだろう。







気づくと、目から涙が零れ落ちていた。








「...うっ...あぁ...っ...ぐすっ...」








嗚咽を漏らして泣きじゃくった。









この終わりの見えなかった生活に、終止符が打たれる時。











救われた。









彼に伝わった。











奇跡が起きた。









「...ごめんね。」









そう言って、私を抱き寄せる彼の手は、とても優しかった。





















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