...ここは、どこだ?
なんで、何も見えないんだ?
辺りを見渡せば、先の見えない黒色。
靄がかっていて、まるで“奈落の底“に落ちたみたいだ。
────光が、見えない。
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...っん...頭がずきずきする...
意識が朦朧とする中、自分の状況を把握する。
...目には何か布が被せてあり、視界を塞いでいる。
...口には、ガムテープらしきものが貼られており、声を出すことは不可能。
...手や足には、手錠らしきものがついており、自由に動かすことができない。
...意識を失う前、一体何が...
...そうか、俺は...
「...お目覚めかな?」
何度も聞いてきた声。
笑い声も、泣き声も...悲鳴も。
君のことなら何でも知ってる。
...優香。
「...優香、どういうことだ?」
...どうして、君がここにいるんだ?
さっき俺の家から出ていったはずの君が
どうして俺に話しかけている?
「…ねぇ、和馬くん?」
...その愛らしい声で、僕の名前を呼ばないでくれ...
僕が汚してしまったんだ、君を。
...だからっ...僕はっ...
「...償えば、許されると思った?」
胸が鷲掴みにされたように、苦しい。
息ができない。
「...また愛してくれるって、思った?」
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
...僕はそんなこと思ってない
ただ、君を傷つけた僕への罰を...
「...そんな和馬くんには、“お仕置き“が、必要だね?」
「...え?優香..?」
すると、足音が遠ざかっていった。
...優香、どこにいくんだ?
わずか数分、耳に全神経を集中させ、優香の動きを感じる。
...何か、重いものを引きづってる?
...だんだん、近づいて来ている?
...そういうことか。
“お仕置き“は僕がすることじゃなくて、されることだったんだ。
...そっか。
ギィィィー ギィィィー
チェーンソーが回る音が聞こえる。
...僕の、すぐ側で。
「...ふふっ...悪い子には、“お仕置き“ しないとね?」
首に手をかけられ
僕は
奈落の底でも
天国でもない
わずかな光と
絶望を混じえた
僕達だけの空間に行けるような、そんな気がした。
〈 キツいお仕置きを。END 〉
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。