出久より身長の高いあなたが出久を見下ろしている状態だ
あなたは少し足を曲げ、首を傾げながら出久を下から睨みつける
ダークグリーンの前髪の隙間から見える緑の瞳は鋭く光っていた
あなたは自嘲気味に笑いながらも出久を睨みつける
すると、あなたはスっと壁から手を離すと出久に背を向けて歩き出した
そう言うと、あなたは部屋の端で腕を組み目を瞑っている久を顎で指した
すると、久は壁から起き上がると出久の方を向く
出久はサッと顔を青くしながら目の前にいる数十年ぶりに見る久を見る
最後に会った時は十歳の誕生日、久が出久にプレゼントを持ってサプライズで家に帰ってきた時だ
それからはずっと海外で仕事をしていると思っていた出久
目の前にいる実の父親に心底驚いている
あなたは言葉の出ない出久を見ると、少し自嘲気味に笑いながら出久達に背を向けた
全員が唖然としている
そう言うと、あなたは足音を響かせながら部屋を出て行った
誰がなにを言おうともう振り返らなかった
その後の事はよく覚えていない
E組メンバーは烏間に、A組メンバーは迎えに来たオールマイトに引き取られる予定だったのだが、当然E組メンバーがある場所に向かって欲しいとA組メンバーを連れて向かった
烏間は防衛省に残り、E組メンバーにはイリーナがついて行った
向かっている途中に言葉を発した人は誰一人としていなかった
E組メンバーは全員が不機嫌だった
出久はずっと頭の中であなたの声が流れる
先程の言葉、出久はあなたをバカにしたつもりは一切なかった
なぜ、あなたが怒ったのかも分からない
本当に心配していたのだ、出久があなたの事を心配そうに話すと、引子も心配そうな表情で同意してくれた
自分だけを見ていた?
いや、あなたの事も見ていたはずだ
あなたが褒められている所を何度も見た事がある
あなたは何が言いたかったのだろうか
出久にはあなたの言っている事の理解が出来なかった
出久は今にも涙が溢れてしまいそうだった
──
───
────
一方その頃、あなたは久の前に座り足を組みながら窓の外を見ている
あなたの目の前には紙の束が並べれていた
そして、その横にはボールペンが
あなたは悲しそうな表情で薄く笑いながら足を組み直し、久の方を向いた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!