あの日、シロに連れられて行った研究所には数え切れない数の脳無がいた
そして、自分の目の前で手をかざすオール・フォー・ワン
自分に何かの変化が起きたのは感覚で分かった
あなたは咄嗟に指先に力を込めると、金色の蝶が現れた
そして、嬉しそうにあなたの周りをヒラヒラと舞う
あなたの顔はどんどん青くなっていく
あなたは必死にもう一度自分の個性を奪って欲しいと訴えるが、オール・フォー・ワンはそれを聞き入れなかった
あなたは奈落の底に突き落とされた気分だ
今更個性があったと言えば、母親はどんな顔をするだろうか
さらに軽蔑されるに決まっている
個性が戻ったと言えば、父親はどんな風に態度を変えるだろうか
以前とは比べ物にならない程気にかけてくれるに決まっている
だが、それは彼女を愛しているのではない彼女の個性を愛すのだ
そして、暫くして出久に個性が発現した
以前、風馬から聞いた事があったオールマイトの個性は大大引き継がれてきたものなんだと
瞬間にピンッときた
個性の発現は満四歳まで
あなたのように奪われていたなら話は別だが、出久はそうでは無い
つまり個性を譲渡されたのだ
全てが崩れる音が聞こえた
出久にとってあなたはそれ程の存在だったのだ
たったそれだけだったのだ
──
───
────
あの切り株に隠されていたのはあなたの本音だった
磯貝は全てを見終わると最初の暗闇にいた
そして、目の前にはダークグリーンの髪の少女が
『一番大っ嫌い』
『私が産まれてこなかったら』
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。