第67話

〜四百六十六話〜
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2023/02/05 05:16
オール・フォー・ワン
これ・・は君に返すよ
僕には強すぎる』
あの日、シロに連れられて行った研究所には数え切れない数の脳無がいた
そして、自分の目の前で手をかざすオール・フォー・ワン


自分に何かの変化が起きたのは感覚で分かった
(なまえ)
あなた
『まさか……!!』
あなたは咄嗟に指先に力を込めると、金色の蝶が現れた
そして、嬉しそうにあなたの周りをヒラヒラと舞う


あなたの顔はどんどん青くなっていく
(なまえ)
あなた
『フルフル……
私……いらない……個性なんて……いらない……』
あなたは必死にもう一度自分の個性を奪って欲しいと訴えるが、オール・フォー・ワンはそれを聞き入れなかった
あなたは奈落の底に突き落とされた気分だ


今更個性があったと言えば、母親はどんな顔をするだろうか
さらに軽蔑されるに決まっている


個性が戻ったと言えば、父親はどんな風に態度を変えるだろうか
以前とは比べ物にならない程気にかけてくれるに決まっている
だが、それは彼女を愛しているのではない彼女の個性を愛すのだ


そして、暫くして出久に個性が発現した
以前、風馬から聞いた事があったオールマイトの個性は大大引き継がれてきたものなんだと


瞬間にピンッときた
個性の発現は満四歳まで
あなたのように奪われていたなら話は別だが、出久はそうでは無い
つまり個性を譲渡されたのだ


全てが崩れる音が聞こえた
出久にとってあなたはそれ程の存在だったのだ
たったそれだけだったのだ
──
───
────


あの切り株に隠されていたのはあなたの本音だった
磯貝は全てを見終わると最初の暗闇にいた


そして、目の前にはダークグリーンの髪の少女が
(なまえ)
あなた
『ヒーローなんて嫌い
殺せんせーを助けてくれなかった』
(なまえ)
あなた
『出久も嫌い
なんで私から全部奪っていくの?』
(なまえ)
あなた
『父さんも嫌い
なんで、認めてくれないの?
個性がないとダメなの?』
(なまえ)
あなた
『母さんも嫌い
私すっごく頑張ってたんだよ?
なんで、それだけじゃダメなの?
化け物だから?』
(なまえ)
あなた
『政府の奴らもみんな大っ嫌い
なんで、私にばっかり仕事を押し付けるの?
なんで自分達でしないの?』
(なまえ)
あなた
『学校の先生も見ないふり
本当は気づいてるくせに……
なんで助けてくれないの?』
(なまえ)
あなた
『でも、こんな事を言っている私が』
『一番大っ嫌い』
(なまえ)
あなた
『私が産まれてこなかったらもしかしたら殺せんせーは死ななかったかもしれない』
(なまえ)
あなた
『私があの時、私がしっかりヒーローを見ていたら
みんながヒーローを嫌いにならずに済んだかもしれないのに……』
(なまえ)
あなた
『あの時、私がエンデヴァーを殴ってでも止めてたら燈矢は今頃焦凍達と楽しく笑えてたのかもしれないのに』
(なまえ)
あなた
『私があの時、壊理をリスクを犯してまで逃がしていたら……』
(なまえ)
あなた
『私があの時、研究所の爆発を止められていたら……
雪村先生は今でも元気にしてたのかもしれないのに』
(なまえ)
あなた
『全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部見全部全部全部全部』
『私が産まれてこなかったら』

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