第23話

仲間の信頼
20
2021/02/01 11:45

彩side

「わっ、ちょっとっ…!待ってよ、彩、早いってば!」

後ろから樹里の声が聞こえる。
だが待っている暇などない。
あの大きな化け物がどうなってるかも気になるし、大人たちが来るまで私達が食い止めなければならないし…。
何よりも、怪我をしているのに戦っている先輩たちが心配。

「あ~や~!」
「もう!遠いところにいた樹里が悪いんだよ?」

少し振り返って話しかければ、不満そうな顔をされた。

「だって~…。」
「文句を言ってる暇があるなら足を動かす!」

その瞬間、大きな爆発音が耳元に届いた。
さっきまで自分がいたところに赤い炎と共に、黒煙が上がっている。

「やばぁっ‼
あんな爆発に巻き込まれたら先輩たちも危ない!」
「彩っ!今の…」
「何が起きたかわからないけど危険なのは変わんないし…!早く行こう!」


*・゜゚・*:.。..。.: *・゜゚・* :.。. .。.:*・゜゚・*


朱音side

今何が起こったんだろう…。

そんなことを考えていると、背中にズキズキとした痛みが走る。

「っ…⁉」

爆発してた…巻き込まれたんだ。

火に強いけど、怪我をしないってわけじゃない。
きっと背中はやけどだらけ。

「…慣れてる…けどっ…痛いなぁ…」

その瞬間首根っこを誰かにつかまれ、私は首に体重をかけるようにして浮いた。

誰かが首をしめている。それなのに何もない。手を伸ばしても何もない。

「がっ…!」

「あらぁ、まだ生きてたのね。
あの爆発に巻き込まれないなんて…本当に運が悪いコね…。」

スヴィが私を哀れな目で見ている。

そうだ…こいつの能力。
【テレパシー】


通りで…何もないように感じるわけだ。

首を絞められているのに、抵抗しない自分が少し怖かった。

「…ぁっ…」

脳に酸素が行き渡らず、視界がだんだん暗くなってきた。

「さようなら。本当にスッキリ~!ガキ共の1番上の方を殺せるなんて…♡」

あー、こいつなんて言ってるんだろう…。

そして意識を失い…



「朱音先輩っ__」

その瞬間、私の首は離され地面に落ちていく。
やばい…死ぬ…。

すると何かが私を支えた。

「せー、ふ!」

この時だけは、後輩の方が背が高いことにちょっぴり感謝した。
急に肺に入った酸素にむせてしまう。
そして、ひどい安心感。

苦しかったのか、安心してしまったのか、それともどっちもだったのか分からなかったが、涙が落ちてきた。

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