彩side
「わっ、ちょっとっ…!待ってよ、彩、早いってば!」
後ろから樹里の声が聞こえる。
だが待っている暇などない。
あの大きな化け物がどうなってるかも気になるし、大人たちが来るまで私達が食い止めなければならないし…。
何よりも、怪我をしているのに戦っている先輩たちが心配。
「あ~や~!」
「もう!遠いところにいた樹里が悪いんだよ?」
少し振り返って話しかければ、不満そうな顔をされた。
「だって~…。」
「文句を言ってる暇があるなら足を動かす!」
その瞬間、大きな爆発音が耳元に届いた。
さっきまで自分がいたところに赤い炎と共に、黒煙が上がっている。
「やばぁっ‼
あんな爆発に巻き込まれたら先輩たちも危ない!」
「彩っ!今の…」
「何が起きたかわからないけど危険なのは変わんないし…!早く行こう!」
*・゜゚・*:.。..。.: *・゜゚・* :.。. .。.:*・゜゚・*
朱音side
今何が起こったんだろう…。
そんなことを考えていると、背中にズキズキとした痛みが走る。
「っ…⁉」
爆発してた…巻き込まれたんだ。
火に強いけど、怪我をしないってわけじゃない。
きっと背中はやけどだらけ。
「…慣れてる…けどっ…痛いなぁ…」
その瞬間首根っこを誰かにつかまれ、私は首に体重をかけるようにして浮いた。
誰かが首をしめている。それなのに何もない。手を伸ばしても何もない。
「がっ…!」
「あらぁ、まだ生きてたのね。
あの爆発に巻き込まれないなんて…本当に運が悪いコね…。」
スヴィが私を哀れな目で見ている。
そうだ…こいつの能力。
【テレパシー】
通りで…何もないように感じるわけだ。
首を絞められているのに、抵抗しない自分が少し怖かった。
「…ぁっ…」
脳に酸素が行き渡らず、視界がだんだん暗くなってきた。
「さようなら。本当にスッキリ~!ガキ共の1番上の方を殺せるなんて…♡」
あー、こいつなんて言ってるんだろう…。
そして意識を失い…
「朱音先輩っ__」
その瞬間、私の首は離され地面に落ちていく。
やばい…死ぬ…。
すると何かが私を支えた。
「せー、ふ!」
この時だけは、後輩の方が背が高いことにちょっぴり感謝した。
急に肺に入った酸素にむせてしまう。
そして、ひどい安心感。
苦しかったのか、安心してしまったのか、それともどっちもだったのか分からなかったが、涙が落ちてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!