あなたside
ドアから彩さん達が出てきたのと同時に、大人達が入って行く。
彩さんは私を見つけて、真っ直ぐにこちらに来た。
「大丈夫…?」
そう尋ねたら、優しい笑みをして、にこっと笑った。
「ありがとう。大丈夫だよ。
私は何もしてないから…」
彩さんは怪我も何一つしていない。
だが、汚れた制服が、敵と戦ったことを物語っている。
そして申し訳なさそうに、ちょっとしたうつむきながら彩さんは言った。
「学校案内が台無しになっちゃったね。ごめんね。」
「全然大丈夫だよ…!むしろ助けてくれてありがとう。」
あなたちゃんは優しいなぁ、と言って自分の制服が汚れていたのに気づいたのか少し私から離れて制服のほこりを払い始めた。
すると何か思いついたのか、はっと顔上げて私に近づく。
「あ、そーだ!
私これからあなたちゃんのことをあなたって呼ぶね。
だから、私のことを呼び捨てでいいよ。
というか私、前にも呼び捨てで良いって言ったよ~?」
食い気味で私に言われて、圧に負けてしまい頷けば、とてもうれしがって喜んでいた。
「あなた!
ねー、私お腹空いちゃった…。お昼食べに行こ。
その後あと、先輩の様子を見てこなくちゃね。」
「うん。いいよ。」
この後私たちは朝ごはんを食べた同じ場所で、昼ご飯を食べた。
またもや彩は大量にご飯を乗っけていて、それでも私より早く食べ終えていた。
そんな胃袋どこにあるんだろ…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。