第20話

脱出
25
2021/02/01 11:41

私たちがこんなに急いでるのは、あなたが襲われている可能性があるからだ。

自然能力は普通の能力よりも強く、能力者の中でも持っている人は少ない。もし生徒情報が漏れているのであれば…水の能力を持っているあなたも対象の1人。
だが…訓練もまだ受けていないから護身術さえ知らない。

この学校の自然能力者の中で1番狙いやすい。


早くあなたを助けに行かなきゃ…でもどうする?
みんなが考え込んでいると急に利菜先輩が声を出した。

「…よし。穴開けよう。」
「は?え、利菜頭おかしくなった?
穴なんて開けたら崩れてくるよ。あなたちゃんだけじゃなく私たちの方も、ドーン!で終わるよ?」

愛奈先輩が目を見開いて驚いた。

「だぁから!扉を破壊するのはしないよ。
…窓ガラスを壊す。」

利菜先輩は窓ガラスを指さす。
窓ガラスに近づいて窓ガラスを開けようとすれば穴を開けるまでもなく開いた。

愛奈先輩が先に先に行って、窓ガラスを割る音がした。

「あなた~…耐えられるかな。」

まぁ、愛奈先輩が脱出する方法は一つ。

「じゃ、先に降りてるね。」

あなたを横抱きに抱えた愛奈先輩が窓から飛び降りる。背中を地面にして落ちていく。

「私達も行こっか。彩。よろしく頼んだよ。」

やっぱり私かぁ…。
コレは何度もやったことがあるが、命懸けだ。ここにいる全員の命が私にかかっている。
私は覚悟を決め、窓から飛び降りて唱えた。

威風凜然いふうりんぜん_…!
自然司りし我が守護神よ…その御力…使わせていただきます!

 
逆風竜波ぎゃくふうりゅうは!』


風が地面から吹いてきて私を支える。
そのまま私たちをゆっくりゆっくり下ろす。
風のコントロールを全て私がやっているから、集中力を切らしてはいけない。
無事着陸すればみんなが上を見上げている。

私もつられて見てみればそこには…

大きな化け物が屋上にいた。

「まるで…超巨大熊みたい。」

隣にいた愛奈先輩があなたを抱えながら上を見上げて言った。
近くにいた他の生徒隊員が駆け寄ってきた。

「先輩!…どうしますか?
私達…隊員は、愛奈隊長の指示に従います。」

意を決したように愛奈先輩は顔を上げる。

「……生徒隊員は先生方が来るまで私の指示に従って。B班からL班は校内探索して他にも部外者がいるかどうか確認して。」









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迅雷風烈… 激しい雷と猛烈な風。
事態が急激に変わるさま。行動が素早いさま。

goo辞書より

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「他の班は避難を手伝って、避難場所に敵が来ないようにして。
A班と利菜は先生方と戦う。
彩は、樹里を呼んできて。
あなたをよろしくね。」

生徒隊員は鋭い返事をして行ってしまった。
私も樹里を呼びに行かなければならないため、いったんその場を離れた。

「朱音先輩方…頑張ってください…」


愛奈side

なんでこんな時に…
今日は大事な会議…とのことで、常駐している職員・大人隊員の数が少ない。

しかもここの学校の敷地内は街1つ位の大きさ…もしくはそれ以上ある。
少し本部からは遠く、来るのが遅くなってしまう。
それまで私たち4人でどこまで止められるか…。
もしものために彩と樹里を呼んだが、それでもどこまで持つかわからない。
…あんなに大きい敵、見たことがない。

非常階段を駆け上がり、15メートル級であろう化け物と対面する。

「死ぬんじゃねーぞ。」
「そっちこそ、私の足を引っ張らないでよ。」

利菜の出された拳を自分の拳で突き返す。

利菜は自分の腰についている鎖の取っ手をつかみ、引っ張ると形がなかった鎖ができあがる。
そして私に対して鼻で笑うとそのまま走っていった。

安心立命あんしんりつめい
生命生み出し我が守護神…力を下さい。』

上に高く高くジャンプをした利菜は空中でまた唱える。

『聖なる鎖の鉄槌!』


鎖が四方八方に飛び、巨大な化け物をぐるぐるにする。化け物は身動きが取れなくなった。

地面に着地した利菜が鎖を力強く引っ張る。

「やめろよ…無駄な力使わせんな。」

力強く地面を蹴り、刀を鞘から抜く。

消息盈虚しょうそくえいきょ…!
時を刻みし我が守護神よ…私に力を…!

必殺
トキノアユミ…!』


刀を化け物の頸に振り下ろす…が。

「なんでっ…⁉硬くて切れない!」

食い込むものの、刀は通らない。
化け物は身体を振るわせ、私を振り払う。
体を捻らせながら着地すると、朱音が背後から飛び出し、斬りかかる。

気炎万丈きえんばんじょう!
炎纏まといし我が守護神よ…その力…貸して頂きます…!

火炎花咲かえんかざき


炎をまとった朱音の刀は脚を直撃した。





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威風凜然… りりしく、威厳のある様子。

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