あなたside
暇だ。暇で仕方がない。
爆発音が鳴ってからそれ以外に変化はなかった。
彩も帰ってこないし樹里さんも見当たらない。もちろん先輩も。
といっても扉を開けて確認するくらい。
時計は4時を指しているから、1時間はずっと部屋にこもっている状態。流石につまらない。
それと…
「昔の事、全部思い出した。」
病院で目覚めた時、あんまり過去を思い出したくなかった。寝てる間に全てを見て思い出した。
思い出したくない理由もわかった。
その時、ふと私が苦しくなる前の会話を思い出した。
愛奈先輩が私を安心させるかのように微笑んで、頭をポンポンと優しく撫でてくれて。
『あー、愛奈お母さんみたい~』って朱音先輩が言って…。
「愛奈先輩…。普通のお母さんってあんな感じなのかな?」
私はあんな目で見て見てもらったことは1度もない。
どこか安心できる、優しい目。
いつも私を見ていた目は妬み恨みが入ったあの目。
思い出して、悪寒が走る。
その時急にドアからノックが聞こえてきた。
「はい?」
「水月ちゃん?」
ノックの主は樹里さんだった。
ドアを開け、部屋に入れると樹里さんは、彩さんのことを話してくれた。
「ちょっといろいろあって…、いや、関係ないわけじゃないし全部話す。」
樹里さんの話をまとめるとこんな感じだった。
談話室であった襲来はあれだけで終わりじゃなかったらしい。情報が漏れていたのか、私…水ノ子がここにいることがバレていた。
敵は水ノ子を抵抗できないうちに奪うため、私が何も学んでいないこの時を狙った。
だが、こちらも何もわからないわけじゃない。敵が侵入したことがわかっていたために私の周りには、先輩方がついていた。
しかし敵もそんなことでは諦めず、強力な奴を用意した。
そいつが先輩達の前に現れたものの、決着がつかず…。敵は自爆した。
その巻き添えを食って、先輩達は怪我を負った。
怪我を負った先輩を助ける為、彩は能力を使い、能力を操るための力が尽きてしまい、今は倒れて眠っている。
「もうすぐ彩も目覚めるはずなんだよね。
病棟まで一緒に行かない?」
と言うことで私は病棟にまた行くことになった。
特別病室に入ると___
「彩?」
と詰め寄る愛奈先輩と…
「で、でも…」
とベッドの上で正座する彩がいた。
何してるの?どういう状況?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。