第17話

(2)「逢ひ見ての」
66
2018/02/12 10:36
実依&龍 (2) 実依side


「今日は大丈夫か?」

いつからか電話をする第一声に
その言葉をかけられるようになってた

「うん、いつもありがとう
あれから大丈夫だよ何もないよ」

心配症だなぁと頬を緩ませる

あれから最初の方はまだなんか言われたりしたけど、龍くんがいてくれると思って強気に出たら何もしてこなくなった

私を変えたのは、貴方だよ

「実依、」

名前を呼ばれて

「なぁに?」

返事をする、ただこれだけの、
この時間が大好きだった

龍くんは部活をやっててバイトもやってて忙しい中、たまに会おうと言ってくれるようになった

「龍くん忙しいんじゃないの?」

ベンチで座って話してる時に
私がそう言うと

「忙しいけど、まぁ、うん心配だし…」

そう言葉を濁しながら
手で口元を隠す龍くんがなんだか可愛くて、
また頬が緩む

龍くんに会って笑うことが増えた

今笑えてるのも
今毎日頑張れるのも
今生きようと思えるのも
今幸せなのも
全部全部龍くんのお陰で

なんでそこまでしてくれるのか全然分からないけど、この優しさにいつか恩返しが出来るといいな

「龍くん今度…」

私が勇気を振り絞り遊びに誘おうと思った時、

「あ、龍じゃーん」

可愛らしい声が私達の間に割り込んできた

「あ、裕美じゃんか、久しぶり」

ズキッと

心が傷んだ、
何も刺さってないのに確かに痛かった

龍くんと仲よさ気に話してる女の子は細くて明るくてハキハキしてて、

まるで私の理想像のような綺麗な子…


「あ、邪魔しちゃった?こっちの子は?」

にっこり笑う顔は女子の私から見ても惚れてしまいそうなもので

「ああ、ネットで知り合った女の子で…」

龍くんが紹介してくれようとしたその時、
その子の表情が凍りついていった

「…なに、龍、もしかしてネットで知り合ったような子と仲良くしてるの?
何やってんの?
どんな子がいるか分からないし嘘ついてるかもしれないんだよ?!」


勢いよく怒りの言葉を“裕美”という女の子は吐いてきた

心に刺さって何も言い返す言葉がなかった

「あんたが何考えて龍にまとわりついてるのか知らないけど、何かしたら承知しないから」


そのまま龍くんを引っ張って去ってしまった

心がこんなにも痛いのは、
どこかで、きっと、
いじめられているのを助けてくれた時みたいに、すぐ言い返して私を守ってくれると思ってたから…


そのまま去ったのも、

あの子の方が大事だから?
あの子の方が信頼してるから?
色んなこと考えちゃって、こんなに、苦しくなるなんて…

その日の夜、電話が来てたけど私は怖くてとることが出来なかった

もう会わない、だなんて言われたら…

考えるだけで涙止まらなかった


「会いたいなあ…」

私はあれから何度か一人で、
龍くんと座っていたベンチに腰を掛けに来ていた

会う勇気がないくせに
話す勇気がないくせに
寂しくて怖くて会いたくてたまらなかった

龍くんの隣にいる時の安心が欲しくてたまらなくて…


「誰に会いたいって?」
「龍くんに会いた……え?」

後ろから声が聞こえて勢い良く振り返った

「ここに来ればいつか会えるかなって、」

2週間くらい会ってなかっただけなのに数年ぶりに会えた気がして、
その変わらない笑顔に涙がこぼれた


「俺も会いたかったんだぞ、
なんで電話出てくれなかったの?」

だって、だって、だって……

「あいつは俺の幼馴染で姉貴みたいな奴なんだよ、引っ越しちまって久々の再会だったんだ」

私の気持ちを恐る恐る伝えると、
笑って説明して私の頭をなでた

「怖がらせてごめんな」

いじめられてた時と同じくらい
もしかしたらもっと、息苦しくて辛かった、

長い毎日だった

「龍くん…、あのね」

私がもう抑え切れない、と
言えなかった言葉を言おうとした瞬間に
口をそっと塞がれた

柔らかい感触が離れた瞬間何をされたか理解をして、顔が熱くなっていった

「実依、好きです、付き合ってください」
「…確信犯でしょ、分かっててやったでしょ、馬鹿」


もう離れたくない、離されたくない

不安になってもあなたのものでいたい

「お願い、します」

そう言ってから恥ずかしくなって、

顔を手で覆うと龍くんは私の手を顔からとって、もう一度唇を重ねた

プリ小説オーディオドラマ