半信半疑ではあるがゾムにさえ勝てば願いを叶えてもらえる
こんな質問をしてくるのだからなんでも叶えられる
財力を限りなくゾムは持っているはずだ
なら、私が遠くへ行くためのお金を用意してくれるかもしれない
なら
ゾムに導かれ木々のない平地に出た
私の住んでいた世界では見られないだろうと思うほど
綺麗な光景に息をするのを忘れてしまいそうだ
STARTの合図と共に私たちは走り出した
さぁ、どう勝つか
そんなことを考えているうちにゾムから攻撃を仕掛けてきた
腹部辺りにナイフを向けられたがそれを回避する
ゾムは刃物を持っていた
小型の鋭利なナイフだ
刺されたりでもしたら終わりだな。確信するともに
接近戦は難しいことに気づいた
そして次は私が仕掛ける番だ
高くジャンプをした後に近くにあった木へ乗ると
そこでゾムの位置をひっそりと見て近づいた。
生憎と武器を備えてなかった私は丸腰でゾムに飛びかかり
手に持つナイフを奪った
ゾムの顔が悪い笑みを浮かべた
こんなに楽しそうに不気味に笑う人はこの長い人生の中で見たことがない
だが、段々と楽しくなってきてしまっていた私も笑みがこぼれた
私はナイフをゾムの首に
ゾムは私のこめかみに銃を
これから分かるのは私たちの勝負は引き分けだ。ということ
色んな理屈を捏ねて正当化するのもいいがこれは圧倒的引き分けだ
ゾムの意見に賛同するのが妥当だろう
私の願いも叶えてくれるらしいし
これなら多分win-winだろう
引き分けなのであまり高価なものはお願いできないな。
と少しばかりお願いごとを悩む時間が必要だったが
結局出した答えは
この人の気に入る国なのだから悪い国ではないだろう
将来はそこに行って過ごすのもいいかもしれない
ヴァンパイアということを隠して
今度はきちんと髪を伸ばして本来の性のまま
案外いい情報を聞いたかもしれない
その国に行けば安心して生きていけそうだ
これからの目標はその国へ行くことにしよう
続く
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。