第36話

概念テレタビ 壊
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2020/11/07 07:09
「大先生我々だ抜けるらしいで」

ふっと何か心になにか触れたような感触。
気色悪。

「へぇそうなんや」

そう零せば目の前の彼はカチッとタバコの先に火をつけてため息を零す。

「お前ほんま心無いな」

その答えに今日は何故か言い返す気力もないのでとりあえずチョップをして済ます。

「いった!何やねんお前」

やかましい声で喚く彼に即答する。

「心あるってだけ」

短絡的に返せば彼はふっーと煙を吐いてこちらを見る。

「お前大先生と仲いいんちゃうんけ?悲しまないん?」

その言葉に違和感とか感じないから心無いとか言われるんやろな。
昔言ったことあるんだけどさ俺の中では人が死ぬのも虫が死ぬのも同じ比重なんだよ。

「悲しないよ」

そう言えば彼は少し固まってこちらを不安そうに見つめ煙が渋滞した口元を開く。

「…ならなんで泣いてんねん」

…あれ?おかしいな。
頬を触ると馬鹿みたいに涙が零れてて必死で拭うがぼろぼろと頬を伝う涙が止まってくれない。
あぁ俺には、みんなが言ってるさ、胸の苦しさとかそういうのがないんだよ。
…俺はきっと壊れてるんだろうな。
そして冷静な頭で止まらない涙を拭った。

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