第15話

中年組 知ってたよ(死ネタ流血表現注意)
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2020/10/10 09:53
地面に組み伏せられた姿勢でふっと目を開けばあなたの顔が目に入る。
必然的に私は目を見開きあなたの顔を見つめる。
その少し赤が入った目はとても綺麗だと思う。

「エーミール…俺…は…」

私の胸元に銃口を突きつけながら彼は言う。
そんな苦しそうにしないでください。
私まで苦しくなるじゃないですか。

「はい」

彼の震える言葉に対して返事をする。

「お前を…殺さな…けれ…ば」

ゲームには抗えないでしょう?
そんなの最初から…最初から知ってた。
私は知ってて彼らと火遊びをしていたのです。
だから今更そんな顔をしないでください。

「そうですか」

「最後に…言い残したいことは…あるか」

無理やり言わされたようなセリフを彼は吐く。
彼の頬に手をそえる。
苦しくても大丈夫ですよ。
もうすぐ終わりですから。
だから私も最終章に向けての言葉をつむぎましょう。

「…そんなの有り余るほど」

「…そうか」

彼は苦しそうに笑う。
辞めてください。
目の前が霞みそうになり目を瞬く。

「あぁ。でもひとつだけ言うのなら。」

ぽたぽたと頬に何かが流れるのを感じる。
涙?
彼の目の端からは絶え間なく涙が流れて私の頬に伝う。
…もしひとつだけ言うのならば。

「あなたに会えてよかった」

心の底からの笑顔を浮かべて彼を見る。
彼は少しだけ驚いてから頷く。

「俺も…エーミールに出会えてよかった」

そう呟くも刹那
銃弾が骨を貫く音と肉が裂ける音が重奏のように重なる。

「エーミールにしては目立ちすぎたかもな」

泣きながら苦笑いをしてかつて友だったものの血の着いた服を着直して息をせずに宙を見つめる彼の上から立ち上がる。

「…サヨウナラだな。ありがとう」

そう男は言い残しふらりふらりと歩きながら霧の中に消えていった。




作者
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解説
これはエーミールがゲームだって知っててループすることも知ってて自分が死ぬこともわかってるって感じっすね

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