第39話

毒素 身勝手
320
2020/11/15 01:34
「あ?なんやこんな夜中に」

眠い眼でベッドからはい出て電話に出れば電話口の向こうから彼のいつもより大分遠慮がちな声が聞こえる。

「…俺だよー…」

あ。久しぶりやな。そんな思考回路を回しては彼の言ってることに対して回答を何通りもの中で1番無愛想な言葉を選んで吐く。

「あーお前か。何の用?」

そういえば電話口からいたずらっ子のように少し弾んでる声と裏に隠された微量な黒いものが見え隠れした声が聞こえる。

「少し遊びたい」

少し悪い予感がするのでさらりと言葉を吐き出す。

「戦争?」

少し遠慮がちに聞けば即答とも取れる速さで彼は言葉を紡ぐ。

「YES」

どこで習ったのか流暢な英語で返す彼に呆れてため息を吐き出しながら眼鏡をかけてパソコンの方に移動する。

「ハッハッハ…デスヨネー」

そんな会話をしながらパソコンを開く。

「あーちなみにお前録画しとけよ」

「…え」

上ずったかすれ声が喉から漏れたらしく彼はケラケラと笑う。

「たまには実況でもしようと思ってな」

ざっけんな。というのが第1の感情。俺を置いてってのうのうとか戻ってくんな。とか。思ってさ。あーでもやっぱりそれを上回るぐらい嬉しくてさ。

「…ふーん」

淡白すぎる愛想のなさに彼は少し不満げに返す。いや、俺のこのノリは慣れてるはずやろ。

「なんや。興味無さそうだな」

パソコンを起動して当然のようにho-iも同時に起動しながらふっーっと溜息をマイクに吐いてイヤホンから流れてる彼の声に相槌を打つ。

「いいだろ別に」

こんなのいつぶりだっけ。グルッペンがまた撮影に参加してくれんのか。はえー。うれしーな。これは本当のことであり俺は鬱みたいに嘘をつかないからね。そんな思考をグダグダ回してはゲームを開始する。

「まぁそうだな」

「いいのかよ」

普段のノリで笑いながら相槌を打つ。
あー本当に何年ぶりだろ。めっちゃ楽しいわ。少しと罵倒と知識の殴り合いと彼の笑い声の空間がとても心地よい。

「…なぁトン氏最近どう?」

んぁ?丁寧に名前を呼ぶ彼の声が鼓膜に響く。…何を聞くんだよいきなり。はー…。自身の思考をまぁまぁとなだめて彼の声に快く…まぁ自分から見て快く返す。

「ん、元気やで」

彼の声に相槌を打ち国境線に兵を積み上げてカチカチとマウスを動かす。ho-iなんてゲーム…彼も相当物好きなんやろな。まぁいいけど。たのしーし。いや嘘…かもしれんわ。いやそれも嘘やけど。

「お前は?」

煩雑に聞けばパソコンの向こうから微笑みが零れそうな優しい声がどこか優しい所で漂う。この雰囲気がどうもダメなんだと思いながらカタカタとキーボードを打ってゲームを進める。

「元気だゾ。心配してくれたん?」

きゅっと黒く沈んだ瞳孔が丸くなるので唾を飲み込んでは喉を震わせからりと笑い彼の返答に精一杯の声を絞り出して3文字で答える。

「まさか」

とりあえずそう言ってはいつも通りの挑発を彼に向かって繰り替えせば彼が楽しげに笑いながら同じ言葉を繰り返す。楽しい。ホントに。
あーでもこの動画のデータ破損させないと。そんな冷たく冷え切った思考に爪を建てたい思考に駆られながらもなんとか彼の声に微笑んでは笑いを飛ばす。

「グルッペン…今気づいたんやけどこれ録画してなかったわ」

「はぁぁぁあ!?トン氏!?」

珍しくガバを起こす俺に叫ぶ彼の声がなかなか心地よい。まぁ本当は破損してない。ちゃんと手元にあるし。

「すまん〜許してクレメンス」

軽々しく言えば彼がふぅっと溜息をつき少しだけ笑う。

「あー許す…」

良かった。許してもらえて。
あーでもごめん。
だけどさ。
もう総統とかグルッペンとかにならずにおれの友達で居て欲しいだけだから。

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