「自分の言葉が人を殺す感触を味わった人が何人いるんやろな、なぁ大先生」
彼の前であぐらを書いて話しかける。
「あ、直接殺すんやなくてな、精神的に殺してまうことや。ほら酷いこと言うてそれでそいつが自殺でもしそうってことや」
独りよがりな言葉を並べながら彼は言う。
「んー…まぉかなりアバウトやね?うん。俺はね、あんまいないと思うで、だって言葉ぐらいで死ぬ馬鹿なヤツあんまおらんからな」
「…でもな、大先生。俺な、おまえがそんな馬鹿やとは思わなかったんよ。だってお前はいつだってへらへらと笑ってたやん。だからみんな…というか俺が何言うてもええと思ってたんやろな」
男は以前と笑いながらも微笑みを絶やさずきつい関西弁でしゃべり続ける。
「俺な、お前が気にしてるとは思わなかったんよ…あぁ、お前は恨んでるんやろか。恨んでるんなら言ってくれへん?お前の口から聞かないとわからんやんけ、あーでもお前もう喋れなくなってるからな、しょうがないわな。…でも俺は無罪だと思うねん。無知は無罪やからなぁ大先生?お前が恨んでるのことを知らなければ俺はお前を殺してないやろ?なぁ、分かる?アホな大先生。俺はお前に恨まれたら…とにかく俺は無罪やと思うねん。俺がどんなにこんなひっどい言葉をお前になげかけたとしても俺はお前に対しては殺すつもりはなかったんや。だから無実…やろ、な?俺はお前を手にかけてもないし作為的にも殺してへんやんけ。社会的に見たら俺は許されるはずやろ、なぁ。大先生お前はそれでええか、って聞いたらお前はなんて言うたか覚えとる?お前は「ええんや、俺はこういうキャラやろ」って言ってたやん、だから俺のお前を卑下する言葉はお前を殺すための言葉じゃなかったんや、俺はお前のキャラクターを貶してるだけだったんや、俺もそういう立ち回りやろ、あぁでもリアルにまで持ち込んだからあかんかったんかなぁ?あぁでも言葉で人を殺しても有罪にはならんやろ、俺はどうして欲しいかわからんわ、許して欲しいわ、いや、ちゃうねん、俺はお前がどうしたいかそれが聞けたらええの。いや、ちゃう、俺は許されたい。お前の言葉で許されたいわ大先生。あぁ喉カラッカラや、お前がおったらお前と喋れたのにお前がおらんからこんなに一人で喋ったやんけ。なぁなぁお前はどう思ってんねん。大先生。俺はお前に殺それてもええからお前の言葉を聞かせてくれよ大先生もう1回相棒と呼ばせ
『シッマ、お前は人殺しやで』
確かに彼の声でそう聞こえた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。