第16話

紫色 どうして
626
2020/10/09 08:53
今より少し若い時の写真を見て彼はふっと笑いながら喋る。

「これ兄さんの写真?若いっすね」

『そうだろ?でもコネシマがこれを飾るって言って譲らないんだ』

「あぁ。これかなり前の写真ですね」

ショッピくんは写真の裏の年号を確認してつぶやく。

『そうだなぁ。』

「そう言えば僕やっと先輩と仲良くなれましたよ」

『良かったじゃないか』

「今まで嫌われてたと思ってたんすよ」

『自己評価が低いショッピ君らしいね』

「でも…前酒に酔わせたら」

『お、何が起きたんだい?』

「俺のことは気に入ってるって言ってましたよ」

『良かったやん』

「アッチの方だと困るんですけどね」

『そうだな』

つかの間の沈黙。
もう秋だと言うのに風鈴がどこかで揺れてる。

「兄さんは元気ですか?」

『うん。元気やで』

「俺らのこと見守ってくれてますか?」

『暇な時はね』

「…まぁいいです」

『そう拗ねるなよ』

「そう言えば鬱兄さんのタバコの癖が酷くなってますよ」

『…鬱か。どうしたんだ?』

「きっと秋が近ずいたからですよ」

『なら俺のせいだな』

「兄さんのせいですよ」

声は交差する。

はず。

「なんで死んだんでしょうね。あなたは」

『死にたくて死んだわけじゃないよ』

「わたし貴方に会ったこともないんですよ」

『ショッピ。ごめんな』

「…はぁ。もういいです」

仏壇に乗ってる俺の少し若い写真に手を合わせて立ち上がる。

『また来てな』

「また来ます」

彼はそう言って部屋を出る。

作者
作者
解説
兄さん→ショッピが聞こえる。
ショッピ→兄さんが聞こえない。

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