今より少し若い時の写真を見て彼はふっと笑いながら喋る。
「これ兄さんの写真?若いっすね」
『そうだろ?でもコネシマがこれを飾るって言って譲らないんだ』
「あぁ。これかなり前の写真ですね」
ショッピくんは写真の裏の年号を確認してつぶやく。
『そうだなぁ。』
「そう言えば僕やっと先輩と仲良くなれましたよ」
『良かったじゃないか』
「今まで嫌われてたと思ってたんすよ」
『自己評価が低いショッピ君らしいね』
「でも…前酒に酔わせたら」
『お、何が起きたんだい?』
「俺のことは気に入ってるって言ってましたよ」
『良かったやん』
「アッチの方だと困るんですけどね」
『そうだな』
つかの間の沈黙。
もう秋だと言うのに風鈴がどこかで揺れてる。
「兄さんは元気ですか?」
『うん。元気やで』
「俺らのこと見守ってくれてますか?」
『暇な時はね』
「…まぁいいです」
『そう拗ねるなよ』
「そう言えば鬱兄さんのタバコの癖が酷くなってますよ」
『…鬱か。どうしたんだ?』
「きっと秋が近ずいたからですよ」
『なら俺のせいだな』
「兄さんのせいですよ」
声は交差する。
はず。
「なんで死んだんでしょうね。あなたは」
『死にたくて死んだわけじゃないよ』
「わたし貴方に会ったこともないんですよ」
『ショッピ。ごめんな』
「…はぁ。もういいです」
仏壇に乗ってる俺の少し若い写真に手を合わせて立ち上がる。
『また来てな』
「また来ます」
彼はそう言って部屋を出る。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!