ただ少し君たちのことが嫌いになっただけ。
目を見て言う勇気はないので俯きながら順々に彼らに向かって述べていく。
「皆から慕われて皆に優しくて誰よりも前を見ていて皆よりも先の所に居る君が嫌い」
「素っ気なくて言葉がきつくてそれでもちゃんと優しくて誰よりも有能な君が嫌い」
「声が大きくて真っ直ぐで優しくて汚れたところなんて一つも見当たらない君が嫌い」
「人のことを愛してて常に人に優しく出来て言葉が綺麗でそれが全部無意識な君が嫌い」
「平和を愛して全人類に優しくして笑いながらいつも強がってしまってる君が嫌い」
「冷めた目をしてるのに優しい言葉の残り香を残して消えて行った純透明な君が嫌い」
「誰よりも強くて優しいのにみんなと平等に話して遊ぶ子供じみた価値観の君が嫌い」
「人に優しくして当人にとって毒でも正しいことを言いきれる正義の味方の君が嫌い」
「嫌だ嫌だと言ってるくせにみんな優しくして最後まで応援してくる健気な君が嫌い」
「不格好に冗談を言って人の心に居座って大人らしく優しいことを言う君が嫌い」
「底の見えぬ博識と全てを許すような優しさを持ち合わせてる癖に謙虚に笑う君が嫌い」
「いつも煽るくせ然るべき時に優しい言葉を選びながら話す気遣いの塊の君嫌い」
「嘘付きのくせに笑えるほどいつもいつもに人のことを気にしてるお人好しな君が嫌い」
(こんな酷い事を言っても笑って許してくれる君達のことが心底から嫌いだよ)
(いや、ごめん。嘘だよ。本当は好きだからさ)
(だからどうか僕のことを嫌わないで欲しいな)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。