第22話

四流 優しい人達
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2020/10/11 03:46
最近彼のことが心配だ。
いつもよりもやつれて見えるし常にタバコの匂いを纏っている。

「エーミール」

彼の肩をとんっと優しく叩くと彼は振り返って身から染みでる優しさを漂わせながら微笑む。

「なんですか?」

彼は目を細めながら聞く。

「なんか、心配になってもうてな?」

フードの中から彼のことを見上げると少しだけ彼の色素のうすい瞳孔が大きくなった気がした。

「…大丈夫ですよ」

ふわりと少しガサツいている手でフード越しに撫でられる。

「ほんま?」

彼の少し優しすぎる声に不安を感じて問う。

「…まぁ…少し、感傷的な気分なだけですよ」

彼は微笑みながら遠くを見つめる。

「んぇ…?感傷的?」

意味がわからず再度彼に向かって問う。

「自分がここにいてもええのかなって」

優しく言う彼はとても儚く見えて酷く綺麗でどうにもこうにも放っておけなかった。

「大丈夫…やで…エーミールの居場所はちゃんとある」

彼はこちらを向いてわからない、とでも言うように首を傾げる。

「どこですか?」

そんなことも分からへんのか。
僕はエーミールの手をぎゅっと掴んでエーミールを真似るように優しく述べる。

「俺の隣にあるやろ。相棒。」

彼は少し固まってから言葉を紡ぐ。

「そうでしたね。すっかり忘れてました」

そう言って彼はふわりと花が咲くように笑った。

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